2008年06月03日

紙について。その2

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前置き無しで、早速前回の続きです。


ツルツルした紙というのは、筆の動かし方がしっかりしていなくとも、そのツルツルが幸い(災い)して、筆が紙の上を滑ってくれますから(滑ってしまいますから)何となく「動かせたように」書き上がってしまいます。

「同筆圧同速度」「同筆圧同速度。その2」の回でも話したような「筆のバネがすっぽ抜けた状態」になってしまっていても、紙がツルツルしているので、すっぽ抜けた部分も一応は黒い線となって書けてしまうのです。

実際にはちっともしっかり筆を動かせてなどいませんし、しっかり書けてもいないのですが、一応は黒い線となっているので、初学者自身の目にはその判断がつきません。


書いた後で紙を裏返すと、しっかりと筆のバネが効いて筆圧がかかったまま書けた線は墨が裏までしっかり通っていますし、反対にすっぽ抜けた部分は墨が通り切らずに色が薄くなっていますから、紙の裏への墨の通り具合というのは、初学者が自分の書いたものを自分の目で判断する場合の一助とする事が出来ます。(『書譜』の回参照)

ところが、極めて薄い紙に書くと、一見したところどこもかしこも同じように裏まで墨が通ってしまいますから、どれ程裏から眺めてみたところで、これまた初学者自身にはその判断がつきません。


更に滲みにくいという点について考えてみると、滲みにくいという事は、墨を付け過ぎたとしても殆んど滲まずに済んでしまうという事ですから、これまたやはり初学者自身には付け過ぎたのかどうかの判断、つまりは墨の過不足の判断がつきません。


つまり、極めて薄くてツルツルして滲みにくい紙に書いていると、実際にはちっともしっかり書けてなどいないのに、ただでさえ正しい判断が難しい本人が、尚更その事に気付きにくくなってしまうのです。


それとは反対に、適度な厚さと表面の抵抗があり、滲みやかすれの出る紙というのは、しっかりと書かないとしっかりと書き上がってくれません。

本来の意味では、薄くてツルツルで滲まない紙でも

「しっかり書かないとしっかりと書き上がらない」

というのが至極当然の道理ではありますが、ここでは

「初学者自身にも『書けていない』という事が自覚しやすいような状態で書き上がる」

という意味だと思って下さい。


筆のバネがすっぽ抜ければ忽ちその部分が醜くかすれてしまいますし、墨を付け過ぎればあっという間に真っ黒です。

紙を裏返してみれば、更に一目瞭然でしょう。

繰り返しますが、書けていない部分はそのままはっきりと書けていないように出来上がりますから、書いた本人が「書けていない」とはっきり自覚しやすいのです。


これ、実は非常に重要で、何かが出来るようになる為には、先ずその前提として、「何が出来ていないのか」について、はっきりと分かっていなければなりません。

そうでなければ何をどのように練習し克服していけば良いのかが分からないからです。

それが分からないまま、只漠然と筆を持ってみても、何の成果も前進もありません。

ですから、「書けていない」という事実を、書いた本人がしっかりと自覚出来るかどうかというのは、極めて重要なのです。

そしてその為には、今回お話している、薄くてツルツルで滲みにくい紙というのは、端的に言えば「適していない」のです。


教室に通われている方で、現在実際に薄くてツルツルで滲みにくい紙を使っている場合、それが教室の指定だったり先生のお薦めだったりする事もあるでしょう。

それにはそれなりの意図と理由があるのでしょうから、頭ごなしに否定するわけにもいきませんし、そもそも教室に通われているのでしたら、書けているかどうかの判断は、自分では出来ないとしても、先生が正しく見極めながら指導してくれているはずですから問題はありません。

しかし、少なくとも独学で書を学んでいる方がそのような紙でしか練習をしていないというのは、私には賛成出来ないのです。


そのような紙で、書けているかどうかの正しい判断を得る手段のないままの状態でしか書いていない人は、例えば画仙紙のような紙に書こうと思ってみても、全くと言って良い程に歯が立ちません。


「無理して画仙紙になど書かなければいいだろ」

という意見は一見正しいようですが、結局は単なる逃げ口上にしか過ぎません。

紙の種類に制約をつけなければ書けないなんて、そんなものは本当に書けているという事にはなりませんし、本当に書けている人であれば、画仙紙であろうと何であろうと、ちゃんとしっかり書けるのですから。



これをお読みの独学者の皆さん、大丈夫ですか?


紙の種類はそれこそ星の数ほどありますが、色々と使ってみる事もないままに

「これは書きやすい!」

と安直に決めてしまうのはどうかと思いますよ。


因みに「適度な厚さ」ってどのくらい?

と思われるかもしれませんね。

そうですねぇ・・・

言葉で説明するのは難しいのですが、どれ程適当にぞんざいに書いても、裏から見て全てそのまま墨が真っ黒に通っているようなら、その紙は明らかに薄過ぎると思います。


それから、個別の銘柄についてのお問い合わせや御質問には一切お答え出来ませんので、御了承下さい。


さて、ここまで2回に亘って紙について考えてきました。

今回で終わりにしようかと思っていたのですが、せっかくなのでもう少し、次回は違った角度から考えてみたいと思います。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。
ラベル:書道
posted by 華亭 at 06:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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