2008年05月29日

同筆圧同速度

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今回は私がこのブログで基本として繰り返し言い続けている

「同筆圧同速度」

についてです。


「今更何で?」

と思われるかもしれませんが、これについては今でも時々御質問を頂くので、一度もう少し詳しく話しておく方が良いと思ったものですから。


因みに内容的には今までお話してきた事のまとめですから、以前どこかで書いた事だらけになりますが、それについてはいちいち断りを入れませんのでお許し下さい。


話をなるべく単純にする為に、今回は話を楷書に限定してしまいましょう。

勿論基本的には他の書体でもあてはまる話なのですが、先ずは楷書の場合に当てはめて話す方が皆さんがイメージしやすいと思うので。


楷書というと、例の

「トン・スー・トン」

ですね。


私は以前これを「諸悪の根源」とまで言いましたが(笑)その根はなかなか深く、その弊害にはまりこんでしまった人は、ちょっとやそっとではそこから脱却出来ないようです。

この「トン・スー・トン」、問題は「スー」の部分です。

「トン・スー・トン」という表現からすると、「スー」の部分はいかにも勢いを付けて「エイヤッ!」と引っ張るようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、それこそが大間違いの源です。


結論から言えば、勢いを付けて引っ張るなどというものとはおよそ正反対の動きこそが、「スー」の正体なのです。


「エイヤッ!」とばかりに引っ張ってしまう人というのは、それによって線自体にも勢いを持たせたいという事なのでしょうが、実際にはそんな事をしてみたところで線に勢いなどついてくれはしません。

それどころか、筆のバネがすっぽ抜けて上滑りしただけの弱々しい線になるのがオチです。

「そんなことはない!」

と思ったあなた。

それは単にすっぽ抜けて上滑りしただけの線とそうではない線との見分けがついていないというだけの話ではありませんか?


板に彫刻刀で一本の直線を彫る事を想像してみて下さい。

先ずは板に「グッ」と彫刻刀の刃を入れます。

これが「トン」だと思って下さい。

次に直線部分を、つまりは「スー」の部分を彫り進むのですが、その時、「エイヤッ!」と勢いを付けて彫刻刀を進めようとするでしょうか?。

いいえ。

恐らく殆んどの人が最初に刃を入れた深さのまま、「グーッ」と力を加えながら刃を進めるはずです。


この時の「同じ深さ」というのが「同筆圧」であり、「グーッ」というのが「同速度」です。

特に「同じ深さ」というのが重要で、同じ深さになっていなければ、彫りあがった線は一本のしっかりとした直線になりません。

「同じ深さ」で彫る為には「同じ速度」でじっくりと刃を進める方が良いというのは想像がつくはずです。

「エイヤッ!」なんてやったら、それこそ刃が板からすっぽ抜けてしまいます。

刃が板からすっぽ抜けてしまうという事は、刃を通して手の力を板に伝えるという事が出来なくなってしまうという事ですから、まともな線になどなりようがありません。

熟練すれば速度を上げてもすっぽ抜けてしまう事もないのでしょうが、そもそもその場合の速度とは、どれ程速くてもしっかりと自分の意思通りにコントロールする事が出来ている状態にある速度です。

単に速さだけを真似てみようとしたところで、その速さをコントロール出来ないのでは、それは単なる暴走に過ぎません。

ですから先ずはゆっくりじっくりと進めなければならないのです。


「そんな事を言っても、勢いを付けて引っ張らないと線が揺れてしまうだろ。」

と思うかもしれませんが、それは初学者の場合には当たり前の話で、誰しも最初から揺れも震えもせずに書けるわけではありません。

私だって最初は情けなくなるくらいに書けませんでしたよ(笑)

それを揺れも震えもせずに書けるようになるまで根気良く続けるのが練習なのではありませんか。


最初はどんなに揺れようが震えようが、そんな事は気にする必要はありません。

この時点では、それは重要な事ではないのです。


「何が重要で何が重要ではないか」

という問題を、初学者が自分自身で正しく判断出来るわけがないのですから、

「そんな事を言っても…」

みたいな事を自己判断に基づいて言ってはいけません。


実際には紙に板のような厚みがあるわけではありませんが、イメージとしては「同じ深さ」でという事を忘れないで下さい。

「同じ深さ」、つまりは「同筆圧」で書けているのであれば、書いたものを紙の裏側から見てみると、最初から最後まで、同じように墨がとおっているはずです。

もしも送筆部の色が明らかに薄くなっているとしたら、その部分の筆圧が抜けてしまっている証拠です。

先程の彫刻刀の例えで言えば、刃がすっぽ抜けてしまった状態ですね。

筆圧が抜けているという事は筆のバネが抜けているという事です。

バネが抜けているという事は上滑りしただけの弱々しい線になってしまっているという事です。

そうならない為には、急激に速度を上げたりせず、ゆっくりじっくりと筆を進めなければならないのです。


筆圧や速度の変化などという話は、それがちゃんと出来るようになった後の話ですよ。

只単に同じ筆圧や同じ速度で引くという事すら出来ないうちから、自由自在に筆圧や速度に変化を付けながら書くなどという芸当が出来るわけがないのですから。


ここまで言ってもまだ

「ホントに出来ないのかなぁ…」

とか思ってませんか?


出・来・ま・せ・んっ!(笑)


ここで素直になっておかないと、あなたもこれから先の20年間、無駄に過ごす事になりますよ。


ところで、そもそも何故私がこれ程までに「同筆圧同速度」と繰り返すのかと言うとですね・・・


と、ここまで書いてみたところで、今回もやたらと話が長くなってしまっている事に気付きました(苦笑)

ですので続きは次回に。

それではまた。

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いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道
posted by 華亭 at 01:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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