2008年03月18日

模刻するなら

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久しぶりの「篆刻のすすめ」です。

このカテゴリー、「徐三庚の側款」について書いたらホントに殆んど気が済んで満足してしまい(笑)、その後一回書いただけで、後はほったらかしになってしまいました。

「それではいけない」

と思い直し、今回はある本について紹介します。


二玄社『河井セン廬の篆刻』


例によってセンの字が表示出来ません。(くさかんむりに「全」です。)


さて、例えば篆刻をやってみようと思い立ち、独学で学ぼうとした場合、最初は自分の名前でも刻してみたりするのだと思います。

そのうち技法書のようなものを読んだりして、模刻(書の臨書に相当するもの)というものを知り、自分もやってみようと思ったとしましょう。

ここで問題になるのが、何の模刻から始めたら良いのか、という点です。

自分の好きな印でもあればそれから始めるのも良いでしょうが、

「好きな印だなんて、そんな事言われても…」

という人も多いでしょうし、その場合、何処から手をつけたら良いか途方に暮れてしまうと思います。


そこで今回は、様々な異論反論を覚悟の上で極論します。


河井セン廬から始めましょう。

そして、それだけでも十分です。


河井セン廬は初世中村蘭臺と並ぶ篆刻史に於ける巨人です。

その存在の大きさは、今日に於いても全く色褪せる事がありません。

それどころか今日までの篆刻界は、ある意味では彼の影響下にその全てが存在してきたと言えるかもしれません。


話は篆刻界に限った事ではありません。

今日の趙之謙の評価を不動のものにしたのは間違い無くセン廬翁なのでしょうし、三井聴氷閣との関わりについても、セン廬翁は三井高堅による蒐集に際しての顧問的役割を果たしていたそうですから、聴氷閣のコレクションの内容を考えた時、それが結果として今日書に関わる我々にとってどれ程大きな意味を持つ事になったのかを考えると、

「篆刻はちょっと・・・」

などと、二の足を踏んでいる場合ではないのです。


昭和20年3月10日、自宅で東京大空襲に遭い、所蔵されていた萬巻の書画蔵書と運命を共にされました。(本当はこの記事も10日にアップしたかったのですが、間に合いませんでした。)

戦後まで存命であったのなら、その後の日本の書壇はどうなっていたのだろう。

と、つい歴史に禁物の「もしも」を考えてしまいます。


話を戻しましょう。

そんなセン廬翁についての印譜とも解説書とも呼べるのが、今回紹介する

二玄社『河井セン廬の篆刻』

です。

著者は西川寧氏。(私のブログには度々西川氏の名前が登場しますが、私が猗園の人間だからというわけではありませんのであしからず)

印刷本とは言え、ある種の印譜としての役割を果たしていますし、手紙や印稿まで収めてあり、興味は尽きません。

更にはその中の一部の印について西川氏の解説があり、これが極めて有益です。

「篆刻とはこうやって見るものなのか」

と思う人も少なくないはずです。

もともとは雑誌『書品』に連載された文章を転載再編したもので、その一部は先日紹介した『書道講座』の篆刻編にも取り上げられています。

一人でただ漠然と模刻をするのと、この本をしっかりと読んでからするのとでは、その模刻の意味合いも密度も、全くと言って良い程に違うはずです。


書道講座』の回でも同様の事を書きましたが、そこにあるのは

「篆刻とは?」

という問いに対する答としての圧倒的なまでの世界観です。

最近ではお手軽お気軽な「ハンコ作り」の方が注目を浴びていますが、それとは全く異質の世界が紛れも無く存在するのです。


「セン廬翁だけでも十分」

と言いましたが、その気になれば、ここから漢印にも浙派にも、徐三庚にも呉昌碩にも、少々大げさに言えばいかなる古典にも遡る事が可能です。

その印に注がれている神経の細やかさはちょっと信じがたい程ですが、最初にこのようなものに触れておけば、「まがいもの」になる危険性は随分と低くなるはずですし、私が「ゆるさ」と表現する日本人特有の叙情性に安易に逃げてしまう事もないはずです。


「蘭臺ではダメなのか」

という意見もあるかもしれませんが、別にダメなわけではありません。

しかし蘭臺翁の場合、徐三庚からの影響が突出している(特に朱文印)のに対し、セン廬翁の方が万偏無く様々なところから影響を受けています。(異論もあるでしょうが)

ですから出発点とするにはセン廬翁の方が適していると思うのです。


と、ここまで話を進めておきながら、実は大問題があります。

先日『書道講座』について書いた時、二玄社のHPを見てみたら…

出てこないんですよ、この本。

絶版になっちゃったのか?

それとも最初から部数限定での発行だったのか?

二玄社!



Amazonで探してみたら1件だけヒットしましたが、何と古書で2万円!!

もともとの定価、4千円ですよ・・・


いずれにしても簡単には入手出来ないのかもしれませんが、もしも見掛けたら、その場で即買いしておくべきだと思います。(値段と相談になるでしょうが・・・)


という事で、今回の「篆刻のすすめ」は本の紹介でした。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:篆刻 書道
posted by 華亭 at 11:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 篆刻のすすめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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