2008年02月16日

20年間

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今回はいつにも増して辛辣な表現が多くなりそうなので御勘弁を。


今月、うちの教室に一人の中年男性が入会しました。

先月案内書を取りに来た時に

「実は今まで独学で20年ほど書いていたんですが、こちらの教室の存在を知りまして、この機会にもう少ししっかりと勉強してみようと思いまして。」

というような話をしていました。


不思議なもので、この仕事も長い間続けていると、案内書を取りに来た時の様子だけで、その人の性格は勿論、その人が実際に入会するかどうか、その人が以前から書をやっていた場合、実力はどの程度なのか、これからうちの教室で学び始めたとして、今後どの程度まで成長出来るのか、更には実際に入会したとしてどの程度続くのか、というような事まで、大体分かるようになります。

的中率は80パーセントといったところでしょうか。


「え〜?ウソだぁ、何で分かるの?」

と言われそうですが、分かるものは分かるんです。(笑)


今回の男性の場合、とても真面目そうで穏やかな感じの方なのですが、正直言って、案内書を取りに来た時点で、強烈にいや〜な予感がしていました。


「嫌な予感って?」

と思いますよね。



以前どこかの回で書きましたが、

「私は○×年間、書をやっている。」

なんて事を自分から言う人に限って、ろくなものではありません。

何故なら、そんなセリフには何の意味も無いわけで、何の意味も無いということが分かっている人であれば、わざわざそういう事を自分から言い出したりしないからです。

こういう人の場合、大抵は何の根拠も無い自信とプライドだけは大きいので、とてもとても厄介なのです。


で、その男性が入会して稽古初日、


男性「先生、これを見ていただけませんか。」

私「・・・・・・・・(こりゃまたどうにも)」


その男性は今までに自分の書いた作品(と自分では思っているもの)を次から次へと取り出し、私の意見を求めたのです。

その表情からすると、私から好印象の評価が聞かれるものと期待している様子です。


私「はぁ・・・・・(あちゃあ・・・、参ったなぁ、こりゃ・・・)」


結果から言えば惨憺たるものでした。

予感的中、いや、私の予想以上にひどかったと言えるかもしれません。


こんな時は仕方が無いので、なるべく本人が客観的に理解出来るように説明する事になります。

「何を説明するのか?」

ですって?


その人の書いたものがどうしてそんなに1から10までとことんダメなのか、それを説明するんです。

これはなかなか辛い仕事ですよ(苦笑)


今回の場合はとにかく全く話にならないレベルでした。

それは書風がどうのこうのなどという話の遥か遥か以前の問題です。


例えるのなら、バイオリンを想像して下さい。

曲を演奏するどころか、まともな音を出す事すら全く出来ていないようなレベルで好き勝手にギィーギィーやりまくっていながら、

「どうですか?私の音楽は?」

と自信満々で聞かれても、誰でも答に窮するだけだと思いますが、今回は正にそれと同じ状態でした。


実はこういう人というのは珍しいわけではなく、

「以前やっていた」

などという場合、殆んどは程度の差こそあれ、似たようなものだというのが実情です。


私が今まで見てきた中で最もひどかった例では、30年以上も(独学で)やっていた結果、自分では大したものを書いているような気になりながら、実は線一本満足に引けないという男性がいました。

本人は線一本すら満足に引けていないという事実に全く気付かないまま、30年間筆を持ち続けていたのです。

そう言えばこの人も初回の稽古時に、自分の書いたものを

「どうだ!見てくれ!」

と言わんばかりに山ほど持ってきましたね(苦笑)


こういう人を見る度に

「いくら独学だったとは言え、何十年もの間ずっと筆を持っていれば、いくらなんでももう少し何かに気付きそうなものだろ。」

と毎回思うのですが、気付かなかったのですから仕方がありません。


私は時間をかけ、粘り強く説得するかのように説明しました。(ホントにイヤな仕事です。)



幸いにも、その男性はとても真面目で、意固地になって私の話を拒絶したりするような事もなく、とりあえずは私の話に耳を傾けてくれました。

どれ程理解出来たのかは甚だ疑問ではありますが、少なくとも自分のやってきた事が全くのデタラメだったという事は理解してくれたようでした。

恐らくその男性は、それまで持っていた自信もプライドもズタズタのボロボロになったと思います。

実際には自信もプライドもただのまがいものに過ぎなかったのですが、それでも本人はかなりのショックだったでしょう。


今後、一から、いや、ゼロからやり直すつもりで頑張ったとして、どこまで行けるのか?

正直な話、なかなか厳しいと思います。


これから先、本人がどれ程素直になってゼロから学ぼうと思ったとしても、20年もの間に身体の芯にまでこびり付いてしまったデタラメな自己流の悪癖がそれを許してくれません。

本人は懸命に正しい練習をしているつもりでも、無意識のうちに悪癖が顔を出してしまうのです。


何と言っても筋金入りのデタラメの悪癖ですから、それが顔を出すうちはいつまで経ってもデタラメなものしか書けません。

その結果、なかなか思ったような変化が表れてくれない事に我慢が出来なくなり、書を続ける事自体が嫌になってしまうのです。


20年30年とやっていた人間が、それを全部キレイさっぱり捨てて、本当にゼロから再出発するなんて、そうそう簡単に出来る事ではありません。

「○×年もやっていた」

という何の意味の無いプライドが、ゼロからの地道な歩みに我慢出来ないのでしょう。


1年続くかどうか・・・

仮に続いたとしても、恐らくまともはものは書けるようにならないでしょう。

勿論、私も出来る限りの事はしますが・・・



それにしても…

私はその人が書いたものを見ながら、

「20年間かぁ…20年前、俺は何をしてたんだろ…」

と、ぼんやり考えていました。


20年間。

長いですよ。


「随分大げさな話だな。」

と思ったかもしれませんが、さっきも書いたとおり、これは珍しい話ではないのです。


特に独学の場合、自分のやっている事が正しいのかどうかを判断してくれる客観的な目が無いので、とんでもないゲテモノやまがいものを垂れ流し続けている事に自分自身がいつまで経っても気付きません。

ダメ出しをしてくれる人間がいないという事は、そういう危険といつも隣り合わせなのだという事なのです。

独学とはそれ程までに本当に、本当に怖いのです。


皆さん、大丈夫ですか?


何だか暗〜い雰囲気になってしまいましたね(苦笑)

今回はここまで。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道
posted by 華亭 at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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