2007年10月17日

墨を付ける前に。その2

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前回は墨を付ける量について

「さっきより増やす」

「さっきより減らす」

と言葉通りに墨を増減する為には、「さっきの量」を、筆に墨を含ませる感覚として、しっかり把握出来ていなければならないのです。


この当たり前の事が出来ていない人、実はとても多いんですよ。


何故か?


というところまででしたね。


何故でしょう?


答えは簡単です。

筆に墨を含ませる時、

「ただ何となく」

含ませてしまっているからです。



料理に例えてみます。

炒め物を作る事にしたあなたは、味を付ける為に塩を振りました。

料理が出来上がり、味見に一口食べてみると・・・


「しょっぱい!」


どうやら塩の量が多過ぎたようです。


さて、次に同じメニューを作る時、あなたは間違いなく塩を減らす事が出来ますか?


「この前作った時はしょっぱくなっちゃったけど、どのくらい塩を振ったんだっけ?」

なんて事では困りますよね。


前回の塩の量を覚えているからこそ、次に作る時にはその経験から塩の量を加減することが出来るのです。


墨の場合も話は全く同じです。


ところが、多くの人の場合、ただ何となく墨を付けてしまっているので、

「さっきより増やす」

「さっきより減らす」

と思っても、肝心の「さっきの量」が分からないのです。


「そんなバカな話があるか」

と思われるかもしれませんが、決してバカでも大げさでもありません。


試しに同じ文字を3回、少しずつ墨を増やしながら書いてみて下さい。

ちゃんと少しずつ増やす事が出来ましたか?


書いてから

「多過ぎた」

「少な過ぎた」

と思ったのでは遅いのです。

書く前に、筆に墨を含ませた時点で、その加減を感じ取る事が出来ていなければならないのです。



以前、教室でこんな事がありました。

生徒が筆に墨を付けて、今まさに書こうとしているその時、

「それじゃ墨が足らないよ。もっと付けなきゃ。」

と私が言いました。

するとその生徒は不思議そうに

「先生、どうして分かるの?」

と、半信半疑の表情で質問してきました。

「じゃ、試しにそのまま書いてごらん。」

その生徒は私に促されるままにそのままの墨の量で書き始めましたが、やっぱり足らずに最後の部分がかすれてしまいました。

「!?ホントだっ!」

生徒は更に不思議そうです。


これは理屈でも何でもありません。

単なる経験なのです。


墨を付ける度に、毎回毎回、墨を付ける量についてどれだけしっかりと意識しながら

「筆に墨を含ませる」

という動作を行っているのか?


これ以外にありません。


この積み重ねこそが、墨の量の加減を自在にするのです。


書を書く際、

「墨を付ける」

というのは、余りに当たり前の動作ですが、当たり前の動作であるからこそ、いい加減にしていてはいけないのです。


墨を付ける前に、もう一度、自分の意識をよ〜く確かめてみませんか?



実は今回の話、今まで私が教室で多くの人達に書を教えてきた中で、

「もしかするとそうなのか?」

と気付いた事でした。


矛盾するようですが、私自身は全くの無意識で筆に墨を含ませています。

と言うよりも、無意識のまま毎回しっかりと意識している、と言った方が適当かもしれません。


私自身にとっては、墨を付ける量を毎回しっかり意識するなどという事は、それこそ余りに当たり前過ぎて、その事をあらためて意識することなど全く無かったというのが正直なところでした。

そして、余りに当たり前過ぎて、

「意識しないまま、ただ何となく」

墨を付ける人がいるなんて、全く想像すらしていませんでした。


ところが、教室で多くの人達に教えているうちに、

「もしかすると、ただ何となく墨を付けちゃってるのか?」

と思うようになったのです。


そこでその点について確かめてみると、殆んどの人が

「え〜?そんなこと意識した事ありません。」

という返事だったのです。


これは私にとって、大きな衝撃でした。


私がいつも、

「書く前の段階での意識」

を非常に重要視している。

というのは、このブログの読者の皆さんなら御存知かとは思いますが、墨を付ける前の意識についてまで、実際に説明し、あらためて意識し直してもらわねばならないとは思いもしなかったからです。


大きな差というのは、何か特別な違いによって生じるのではありません。

ほんの小さな差の積み重ね、それこそが結果として大きな差となっていくのです。


チリも積もれば、という言葉がありますが、書にもあてはまる言葉だと思います。


皆さん。

もう一度、自分自身を振り返ってみて下さい。


そして、墨、付ける前に思い出して下さいね。


今回は辛口になってしまいましたが、ここまでにしましょう。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。


ラベル:書道
posted by 華亭 at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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