2007年05月01日

臨書が好きで何が悪い

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近年、書道というと、所謂「お習字」と呼ばれるような習い事としての意味合いと、高らかに自己表現を謳った「芸術作品」としての意味合いと、その両極端のような気がしてなりません。(実は最近に始まった事ではないのですが・・・)


お習字が書とは全くの別物だとは言いませんし、書を始めるきっかけとしての「字がキレイになりたい」という気持ちについても否定するつもりは全くありませんが、極めて広く深い書の世界の全体像からすると、それはあまりにも狭い範囲の話でしかありませんから、書道教室でちょっと筆を持った程度では、書の世界の入り口に立つことすら出来るかどうか、というのが現実です。


一方、以前「まがいもの」の回でも愚痴をこぼしましたが(苦笑)、自分を

「私は書家だ!」

と騒ぎ立て、「自己表現」や「芸術」といった言葉を連呼し、その挙句に化け物じみたまがいものを垂れ流している、という人間も数多くいます。

テレビを始めとするメディアに受けの良いのは、大抵はこちらの部類のようですし(全てがそうだとは言いませんが)、一般的なイメージも、彼らのようなタイプを「書家」としてイメージしているのではないかと思います。


また、公募展での入選入賞歴に血筋を上げ、賞の上下や役職の上下によってしか自分や人の書を判断出来なくなってしまっている、という場合もありますね。

この場合も、本人は「自己表現」による「芸術作品」を生み出しているという自負は極めて強いのでしょうし、書を本気で学んでいるという自尊心もあるのでしょう。

しかし、入選入賞歴や役職など、本来は書とは何にも関係の無い事です。

何も関係の無い部分に囚われて、この弊に陥ったまま、自分自身それに気付かずにいる人は決して少なくありません。

この辺の話は、以前「必要悪」「必要悪その2」の回でも、昇級制度を例に挙げてお話しました。


お習字レベルで書を分かったかのような顔をして語ってしまうのもどうかと思いますし、かと言って

「『自己表現』だ!『芸術』だっ!!そうでなければ書ではないっ!!」

と意気込み過ぎてしまうのも、あまりに短絡的ではないかと思います。


「きれいな字」がどうだとか、「芸術」がこうだとか、「入選入賞役職」が何だとか、そんな事には興味が無い。

そういった事に左右されることも無く、「作品を書く」などと肩肘張ることも無く、来る日も来る日も好きな臨書に明け暮れる。

そんな書の姿の方がよっぽど純粋で潔いではありませんか。

そんな書との関わり方も、もっと積極的に認められるべきだと思うのですが・・・


書の世界では昔から「奴書」に陥る事を何よりも警戒し忌み嫌いました。

簡単に言えば、ただの物真似に終わってはいけない、という事です。

しかしもしも私が、例えば徐青藤と同じだけ書けるようになれるのなら、彼が見ていたであろう書の世界に於ける景色を、私も見ることが出来るのなら、私は彼の物真似で終わってしまったとしても、それで十分に幸せでしょう。

勿論本質的には、物真似に終わってしまっていては、彼らの辿りついた領域には決して立つ事は出来ないのでしょうし、そこまで含めた上での「奴書」に対する警戒なのですが・・・


西川寧氏は、趙之謙に深く傾倒していた時、次のような一文を残しています。


今はもっと己を捨てて趙子の懐に抱かれていたい。ただもうそれだけでいいと思っている。「人の奴書となるなかれ」という言葉がある。「一家を樹立する」という考えがある。これは確かにホントウの事である。しかもこういう考えは、今の私には却って小英雄の空虚な雄たけびでしかない。


この一文、我々のような凡人こそ、もう一度じっくり考え直してみるべきではないでしょうか。


みなさん、どう思われますか?

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道
posted by 華亭 at 11:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 臨書のすすめ 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
三井記念美術館の「拓本の世界」を見に行ってきました。
ここのブログで紹介している拓本がありました。
はじめて書(拓本)を見ましたが、自分の習っている字を探して、
字形を見ているだけで楽しめました。
ブログ、おもしろいので楽しみにしています。
Posted by いつも見てます at 2007年05月04日 14:56
コメントありがとうございます。
地味なブログなので、読者の反応は期待せずに開設したのですが、それにしても無さ過ぎだったので(苦笑)とっても嬉しいです。

拓本の実物を目にすると、何だかそれだけでもその古典に親近感が沸くような気がしませんか。

そうやって自分なりに古典を自分の意識に引き寄せる事が大切なんだと思います。

「のんびり」というタイトルどおり、なかなかアップ出来ずにいますが、これからも覗きにいらして下さい。
Posted by 華亭 at 2007年05月04日 21:46
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