2007年02月19日

必要悪その2

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前回は昇級制度について、

「昇級制度によって認定される級や段は、その人の書の水準を計る物差しとしては全く機能しない」

とした上で、

「昇級制度の本当の問題は、統一の基準が存在しないという事にあるのではない」

という話まででしたね。


話は書に限ったことではありませんが、

「それまで出来なかった事が出来るようになった」

とか、

「分からなかった事が分かるようになった」

とか、

「今まで気付かなかった部分に気付く事が出来るようになった」

とか、

そういった

「前に進んだことから得られる喜び」

「自分の中に蓄積してきたことから得られる喜び」

というのは、本来、昇級などというものとは無関係なものであるはずです。


人によっては、「前に進む」「蓄積する」などと事を構えて意図しないまでも、その時間を過ごす事自体に喜びを感じている、という場合もあるでしょう。

この場合には尚更、昇級などというものとは無縁のはずです。


ところが、昇級制度の中に身を置き続けているうちに、昇級そのものに一喜一憂するようになり、

「昇級したか否か」

という事だけが意識の上で重要視されるようになり、

「前に進んだことや蓄積してきたことから得られる喜び」や「その時間を過ごす喜び」

といったものが覆い隠されてしまうのです。


話を書に限定しましょう。

書の楽しさや面白さ、書を学ぶ喜びというのは(勿論、人それぞれでしょうが)

「昇級したか否か」

などというものではないはずです。


ここで

「何で?そうかな?」

と思われた方、もう一度よ〜く考えてみて下さい。

あなたは昇級制度があるから書を続けているのですか?

級や段の認定を受けたいが為だけに書を続けているのですか?

もしもそうなのだとしたら、悲しい事ですが、あなたにとっては、書の面白さとは全く関係の無い部分だけが、あなたが書を続けている理由になっている、ということになります。


確かに、前に進んだことや蓄積してきた事から得られる喜びというのは、何ともささやかなものですから、なかなかはっきりとした形として現れてくれるものではありませんし、書の面白さといったものも、お手軽お気軽に感じる事が出来るようなものではありません。

それに比べて、級や段といったものは、自分のそれまでの成果を目に見える形で、自分以外の誰かによってはっきりと表してもらえているように思えますから(そう思えるだけで実際には違うのですが)、それに飛び付きたくなるのが人情なのかもしれません。

特に子供の場合、昇級を励みに頑張る、という部分が大きいのが現実です。

もっと言えば、昇級制度が無ければ、止めてしまう子供の方が多いかもしれません。


今回、昇級制度を必要悪と呼んだのは正にこの部分の事で、昇級制度という書本来の楽しさや面白さとは一切関係の無い部分を励みにしながら、いつしか昇級自体が目的になってしまう、という状況は、どう考えても正常なものとは言えません。

それでも、現実として、それを励みに教室に通っている人達が大勢いる以上、いきなりその全てを否定して、彼らから励みを奪い去ってしまうという事は、果たしていい事なのかどうか・・・

矛盾だらけの昇級制度ですが、それを励みにしながらも、少しずつでも書本来の楽しさや面白さに気付いていってもらう事が出来るのであれば、それもまた一つの道順なのではないか。

そう思うと昇級制度を否定しきれず、必要悪として清濁併せ呑んだまま、教室で書を教えているのです。


しかし、繰り返しますが、昇級制度によって齎される実感というのは、書本来の楽しさや面白さといったものとは一切関係の無いものです。

その部分だけは忘れてはいけません。


尤も、この問題については、我々のように書を教えている側の人間にも大きな責任があります。

書の楽しさ面白さを、教室で接する一人一人に本当に伝えようとしてきたのか?

昇級制度に乗っかって、楽をしてきたのは自分達の方ではないのか?

この自問自答の上での自戒無しに教室に立つことは、教える側の人間として絶対にあってはならないと思います。

昇級制度にもたれかからずとも、書の楽しさや面白さだけで教室に来る人達を惹きつけられるような努力を、もっともっとしなければならない、そう思っています。


今回お話した事と全く同じ理屈は、公募展についても言う事が出来ます。

公募展の功罪については随分と以前から語られ続けていますが、結局何も変わらないまま今日まできていますよね。

今回ここで改めて話をすることは避けておきますが、皆さんも昇級制度にせよ公募展にせよ、もう少し冷静に考えたほうが良いと思います。


書の楽しさや面白さとは、誰かに認定してもらうものではなく、自分自身の中に大事に育てていくものだと思います。


今回は「のんびりと」どころか熱く語りすぎました(苦笑)

次回からはまた肩の力を抜いていきたいと思います。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道
posted by 華亭 at 13:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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