2006年11月02日

志半ば

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随分と久しぶりのアップとなってしまいました。


今朝の新聞を見て驚きました。

「白川静氏死去」


驚きと共に、

「ついにこの日がやってきたか・・・」

という暗い思いに包まれました。


字書(篆書の前に。その2)」の回を始め、このブログでもこれまでに数回、白川氏の著作を紹介してきました。

白川文字学については、賛否両論があることを承知の上で、それでも尚、どっぷりと浸かりきってしまいたくなるほど、その内容は強力なものでした。


2ちゃんねるで、白川学説について紛糾している掲示板を見たことがある、という話は以前にも書きましたが、その内容は大まかに言えば、

「漢字も言語を扱うものである以上は、言語学のセオリーに則って語られるべきであり、その点からすると、白川氏の説は荒唐無稽な絵空事に過ぎない」

というものでした。


この意見に対して、具体的な論戦を挑めるほどの知識は私にはありませんが、

「言語学のセオリー」という大前提の上に立ったその意見に対し、その大前提として掲げるセオリー自体の正当性についてはどうなのか?

本当にそのセオリーは完全無欠な大前提として掲げる事の出来るものなのか?

という疑問を持った事を覚えています。


白川氏自身、

「私の学問は既存の概念に凝り固まった者からはとかく批判の的になる。その決まり文句は『正統な方法に沿っていない』というものだ。」

と語っていました。


白川氏は『正統な方法』と呼ばれ続けてきたものを一度白紙に戻し、文字学研究に於ける新しい方法を作り出そうとした人だと言えると思います。


文字学ばかりが脚光を浴びた白川氏ですが、彼の学問の領域は極めて広大で、彼にとっての文字学とは、言わば道具立てとして備えられたものに過ぎませんでした。

戦後、西洋文化に蹂躙され尽くしてしまった東洋の復活。

これこそが、彼が目指したものでした。


東洋には同時代の全西洋世界の水準を凌駕するほどの高度な文明文化が存在していた事、その流れが脈々と現代まで流れ続けている事、それを証明する事によって、西洋ともイスラムとも異なる、東洋独自の世界観というものを世界に認知させ、西洋文化、換言すれば欧米文化に駆逐されてしまった東洋の世界観に基づく「東洋の誇り」を東洋自身の手に取り戻す。

文字学はそのための道具の一つだったのです。

氏自身、志半ばの事だったと思われます。


平凡社から出版されていた

『白川静著作集別巻』

はその多くが未刊のままです。

続刊予定として遺された著作集は今後刊行されるのでしょうか?

氏自身による校正作業はどこまで進んでいたのでしょうか?

未刊のままになってしまうとすれば、これほど悔やまれる事はありません。


白川氏が一般向けの講演や著作などに熱心に取り組んでいた事は周知の事実ですが、それにしても、仮に『別巻』の多くが未刊のまま遺されてしまうとすると、『別巻』の刊行という大事業を抱えたまま、驚くべき数の一般向け著作を次々と企画し、出版し続けた出版社側の責任は無いのでしょうか?

話は平凡社だけの事ではありません。


「最近人気があるから。出せば売れるから。」

という原理で出版社が動くのは当然のことなのかもしれませんが、『別巻』のような仕事を抱えたまま、売れるものを出すために『別巻』の仕事に集中出来ないような状態があったのであるとすれば、出版社の良心を疑わざるを得ません。


話がそれました。


まだまだ長生きしていただかなければならない人でした。

氏の研究内容は今後もさまざまな研究者によって検討検証されていくことでしょう。

それに対する氏自身の意見を聞くことがもう出来ない、それが残念でなりません。

心より御冥福をお祈りいたします。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。


ラベル:書道 白川静
posted by 華亭 at 21:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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