2012年04月06日

書を教えるという事

これまでの記事の一覧はこちらへ
記事の一覧です

通信添削についてはこちらへ
通信添削について』

メールによる御質問はこちらのアドレスへ
nonbirishodo@mail.goo.ne.jp

----------------------------------------------------------
以前の反省などどこ吹く風、愚痴全開のブログへようこそ。


先日、娘が算数の問題が分からないというので教えていたのですが、その様子を側で見ていた妻が

「う〜ん…」

と唸っています。

私「どしたの?」

妻「すごいっ!教え方が上手っ!」

私「あのね〜(苦笑)、一応これでも人にものを教える事を仕事にしてるんですけど…」

妻「それにしても凄いっ!いっその事、書道教室やめて学習塾にしよう!!」

私「……(汗)」


その人の理解の状態を、教える側の人間が正確に把握しておく事は、書の先生に限らず人様に何かを教えるに際して極めて重要な事だと思います。

分からなくなっている当の本人というのは、

「何が分からないのかが分からない」

という状態である事が少なくありませんから、そんな本人に代わって教える側が、先ずはそれをはっきりさせてあげる必要がありますよね。


そもそも

「ここまではしっかりはっきり理解出来ている。」

「この辺りから理解が少し曖昧になり始めている。」

といった見極めを誤って目先の問題にばかり気を取られて教えようとしてみたところで、本当の意味での理解は得られないでしょうから。

必要とあらば遡るべきところまできちんと遡る。

ではその「遡るべきところ」とは何処なのか?(これがとっても大事)

その正確な判断の上にこそ、しっかりとした理解が得られるのではないかとも思います。


娘に算数を教えていた時の場合では、私のその判断の付け方が妻の目から見るととてつもなく早く的確なものに感じたらしく、

「すご〜いっ!学習塾やろうっ!」

となったのですが(苦笑)、まぁ、私にとっては仕事柄の習慣みたいなものですから、その時娘に教えていたのが算数であったにせよ、(得意気でも嫌味でもなく)今更わざわざ誉めてもらう程の大した話ではありません。(実は妻に誉められてちょっと嬉しい)


と同時に、

「この判断を色々な場面毎に瞬時に付けていくというのは、慣れていない人には実は難しいのかな?」

と思ったりもしました。


「将来的には書道の先生になりたい。」

という希望を持って教室に通い始める人は少なくありませんが、そういった皆さんはほぼ間違い無く、

「書道の先生になるには技術と知識が必要」

裏を返せば

「技術と知識があれば(技術と知識さえあれば)書道の先生になれる」

と思っています。

技術と知識が無くては話にならないのは当然ですが(技術も知識も無い「先生」も星の数程いますが今は触れません。)、実際の話、人様に教える時に一番必要なのは、前述の判断力なのではないかと思うのです。


更に言えば、教える側というのは

「その人にとって最善のアドバイスとは何か?」

という判断が問われ続けるわけで、そこでは教えられる側の十歩先百歩先まで見越した上での

「今、この時に指摘すべき事」

が求められます。


似たような話はこれまでにも書いた事がありますが、十歩先百歩先まで見越した上では、

「今は敢えて言わない。言うべきではない。」

という事もたくさんありますし、質問された事にそのまま答えられればそれで良い、という程単純な話ではないのです。

書は非常に複雑で広範な要素を含んでいますから尚更です。


つまり、仮に技術と知識がある程度自分の中に用意出来たとしても、「人に教える」ためにはそれだけではどうにもならない、というのが現場の実情なのです。

自分自身が上達するのと人に教えるのとでは話が全く別なのですから。


たかが書の先生ですが、されど、書の先生なんですよ(笑)


自分で「書の先生」などと呼ばれる仕事をしておきながら妙な話になりますが、正直言うと、皆さんどうして「書道の先生になりたい」などと思うのか、私にはそれが全く理解出来ません(笑)

私の感覚としては「なりたい」と思ってなるようなものではないような気がしますし、「なりたい」と思ってなれるようなものでもないように思えます。

何と言えば良いか分かりませんが、とにかく「なりたい」と思ってなるというのには、私には何だか違和感があるのです。

教職としての書の先生というのは話がまた別ですし、

「長年書を続けてきた結果として、人に教えるようにもなった。」

というのならよく分かるのですが…


仮に技術と知識だけに限ってみても、一通りの範囲(どこまでをこの範囲内とするのかは非常に難しい問題ですが)ですらそれを身に付けるのには皆さんが想像するよりも遥かに膨大な時間と労力と(更にはその前提としての熱意と忍耐と)が必要になりますが、その割には、結果として身に付けたものを活用する「仕事(商売)」として考えた場合、書の先生という仕事はあまりにもお金になりません(苦笑)

しかも、せっかく苦労して身に付けた技術と知識もそれだけでは役に立たないとなれば、皆さん尚更やりきれないでしょう。

尤も、以前にもどこかの回で書いたように商売としてのやり方は別問題ですから、お金にならないというのは私に商才が無いだけの話なのでしょうが、それにしても、今5歳の息子が仮に将来やりたいと言ったとしても、私は絶対に反対します。


「趣味を活かして副業として」

「主婦業の空いた時間を使って」

「定年後の収入として」

というのもありそうな発想ですが、同じ時間と労力とをかけるのなら、他にいくらでも実際の収入に結び付けやすい技術や知識があるのではないかと思いますし、

「何も好き好んで面倒で厄介な世界を選ぶ必要もないでしょうに」

と思ってしまうのです。


恐らく今回の話の根本的な問題は、書の技術や知識というのは皆さんが思っている程簡単には身に付かないという現実や、しかも苦労して技術や知識を身に付けたとしても、「人に教える」にはそれだけではどうにもならないという実情からは余りにもかけ離れた、「比較的容易なもの」としてのイメージを、「書道の先生」というものに対して持たれてしまっている事にあるように思います。


以前たまたまネットで

「書道の先生って楽な感じしない?座って丸付けしてるだけで月謝貰えてさ。」

といった内容の話を読んで何ともやりきれない思いになった事がありますが、世間一般から見た「書道の先生」に対するイメージなどというものは、大同小異この程度のものでしかないのでしょう。


しかし、以前にも書きましたが、皆さんから見えている私達「書の先生」の姿というのは、私達の本体からすればそのほんの僅かなごくごく一部分に過ぎません。

その一部分だけを捉えて安易にイメージされて(無理もない事ではあるのですが)

「書道の先生になりたいです!」

と言われても、こちらは戸惑うばかりなのです。


誤解の無いようにお願いしたいのですが、私は何も書が特別に凄いとか偉いとか言いたいのではありません。

それがどのような種類の仕事であろうと、極めて専門的な内容で成り立っているものを仕事にするには、大変な努力が必要である事は私がここで改めて言うまでもない事です。

只、

「同じ苦労するなら書の先生は割に合わないですよ」

と、皆さんに言いたくなってしまうのです。


つまり、

「みんなが考えている程簡単なものじゃないんだよ!」

という、普段の教室ではなかなか言えない苛立ちにも似た不満をここにぶちまけた、という、愚痴全開ブログの本領を発揮した話なのでした。

それではまた。

----------------------------------------------------------

初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

nonbirishodo@mail.goo.ne.jp


定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道 通信添削
posted by 華亭 at 19:20| Comment(4) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
以前よりブログを拝見させていただいています。

大人になってから書道を習い始めて、2年ほど経ちましたが、『書道の学に方』が分からず、
最近まで悩んでいて、どこかにその答えがないかな?と。

前回の記事の、はらいの仕方一つにこだわる話やその未熟さの背景。
そうやって教えていただくととっても納得できて、
『今の未熟さならしょうがないこと』だと安心して進むことができますね。

私の先生に疑問点・迷っていることを聞いても「言っていることが分からない・伝わらない」と時に怒られます。
分からないから、尚更質問の仕方があやふやなんですが・・。
そんなわけで、最近は質問は最小限に留め、
他の人に親切丁寧に説明していることを側で聞いて知識を集めて消化して身につけてきました。

先生・生徒の性格や相性もあるんだろう・・と思っていました。

華亭さんは男の方なんですね・・。
今日記事から、知りました。
女の方が建設的な考え方で書かれているのかと思っていました。
今後も興味深い記事を楽しみにしています。
Posted by 和 at 2012年04月06日 21:16
和様

はじめまして。
丁寧なコメント、有難う御座います。

少々変わった傾向のブログですが、多少なりともお役に立てれば幸いです。

先生にも色々なタイプの先生がいますし、御指摘の通り相性の問題も確かにあります。

和様の先生についての私見は差し控えさせて頂きますが、「私はこうですよ」という意味で少しお話させて頂きますね。

その人がどこまでは理解体得していてどこが分かっていないのか、といった事は、書いたものを拝見すればすぐに分かる事ですし、皆さんの質問や疑問の殆どがそもそもの着眼点が見当違いなものである事も、最初から承知しています。

つまり、「どれ程分かっていないのか」という事については、私の方が本人よりも遥かに分かっているという事です。

そうでなければ指導など出来ませんから。

要は、そこから先の対応が、先生によって十人十色、という事なのかと思います。

女性と思われていたとは意外でした(笑)

過去記事数もいつの間にか随分と増えましたが、その中で和様が興味の持てそうな記事だけでも拾い読みしていって頂きますと、たまに妻の話や「俺」といった一人称が出てくるので、「あぁ、男だ」と納得して頂けるかと思います。

多忙を理由に放置しがちなのですが、今年は少しずつでもアップしたいと思っていますので、今後とも宜しくお願い致します。

御感想御質問など御座いましたら、いつでもお気軽にまたコメントなさって下さい。

それではまた。
Posted by 華亭 at 2012年04月06日 23:07
初めてのコメントが長文で失礼しました。
そして、丁寧な返答ありがとうございました。

前記事;『記事一覧』をコメント後に読まさせていただき、私が知りたいことがいっぱい紹介されていたんだと、
遅まきながら気づきましたっ。(焦)
【理屈と生真面目とプライドの高さ】というところでは、自分のことのよう・・と思いました。
(先生の手本を裏切らない文字を書くために、頻繁に確認していたんですが、
当時、息を殺しながら書く作業はしんどいものでした。)

華亭さんが女の方(?)と思ったのは、
代行の先生が女の先生で、解りやすい説明で教えてくれていたもので、
女の方のほうが、現実的に確実な指導をされるのかな?と思っていましたので・・。

1年前から私に対する指導方針は変わり、自分でしんどい思いをして習得するよう厳しくなったので、
私が悩んでいることに対しても、自分で乗り越えるように言葉をかけなかったのかな・・と思っています。

けど、華亭さんの指導者側の視点を知ることができて、
今では脱力して(色んな角度でヒントをもらいながら)学べているようです。

また、今後も記事の更新楽しみにさせていただきますね。

今日も、長文失礼しました。
Posted by 和 at 2012年04月08日 02:02
和様

あくまで私見ですが、厳密に申し上げれば性別による教え方の違いの傾向はあるように思います。

が、それは和様が抱いていらっしゃったイメージとは少々異なるように思いますし、やはり性別による違いよりも個人的な違いの方が大きいのかなと思います。

ブログでも度々書いているとおり、初学者の場合特に「何を学ぶか」という事よりも「どう学ぶか」という事の方が重要ですが、初学者にとっては「どう学ぶか」というのは非常に難しい問題でもあるでしょうから、「正しく学べているかどうか」を正しく見極めるのが、指導する者の役目であるように思います。

「肩の力を抜いて」というのは大切ですね。

力み過ぎて長続きしないのでは仕方無いですから。

和様も御自身と書との距離感と御自身のペースを見付けながら進んでいって頂けたら、と思います。

それではまた。

Posted by 華亭 at 2012年04月10日 01:16
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック