2006年10月13日

曹全碑

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久しぶりのアップになってしまいました。


今日は「臨書のすすめ 隷書」ということで、『曹全碑』です。

テキストは今回も二玄社『中国法書選』として話を進めます。

『曹全碑』については、「何から始めれば?隷書の場合」の回でも取り上げたので、内容が重複してしまう部分もありますが、お許し下さい。


このブログでは、テキストとして基本的に二玄社『中国法書選』を取り上げていますが、拓本ものの場合、諸本の中でどれをテキストにするかという問題があります。

今回取り上げる『曹全碑』についても当然その問題があるわけですが、ここでは『曹全碑』というと必ず挙がる点について少しだけ、触れておきたいと思います。

この碑の原石は、今日でも西安の碑林博物館に蔵されています。

明末に壊れて碑のほぼ中央部分で二分してしまったらしく、大きく断裂が入っています。

この断裂紋が無い拓が旧拓本になるわけです。


それからもう一つ。

1行目中段の「乾」字の偏が「車」に改刻されている、というのが定説です。


『中国法書選』の底本は、旧拓で、改刻以前のものですが、少々墨の調子が重たいのが難点です。

『書跡名品叢刊』の底本は、拓調では申し分ありませんが、改刻後の近拓本です。

『名品叢刊』の解説では、拓調の優劣により敢えて近拓本を底本に選んだ事が述べられていて、断裂により失われた文字については、その部分のみ、巻末に旧拓本からの抜粋を掲載しています。


私が自分自身で『曹全碑』の臨書を繰り返した時、そのテキストとして使用したのは『名品叢刊』でした。

『名品叢刊』本と『中国法書選』本とでは、その印象は全く異なります。

拓本ものの場合、こういった問題は常に付いてまわるのですが、それがまた面白さにも繋がるわけです。


『中国法書選』をテキストとして薦めておきながら、話が矛盾するようで申し訳ないのですが、『曹全碑』に限らず拓本ものの場合、影印本でかまいませんので、出来るだけ多くの拓調を目にしておいた方が良いと思います。


何から始めれば?隷書の場合」の回でも書いたとおり、八分の頂点として『禮器碑』を挙げる意見は古来からありますが、隷書学習の最初の手本としては、『禮器碑』の筆法は複雑過ぎると思います。

その点、この『曹全碑』は拓が鮮明であることも手伝って字画が明瞭ですし、一見単純に見える線質から描き出される左右のはらいを大きくゆったりと伸ばしたその字形は、八分の典型として学ぶには格好のものと思われます。


「とにかく形臨」「運筆は同じ速度で」

というのは、このブログで今まで何度も繰り返してきた題目ですが、ここでもやはり同様です。


隷書の場合、入筆が逆筆になるので、楷書の場合のように不用意に

「トン・スー・トン」

とやってしまう危険性は少ないかとは思いますが、それでも送筆部の速度のみが急激に上がることのないように、十分に注意して下さい。

書いた紙を裏返して見て、入筆部も送筆部も同じように墨が通っていればひとまず大丈夫でしょう。


形臨については、一人勉強の場合、自分の書いたものと手本とを見比べても、どこがどう違うのかということに気が付くこと自体が、非常に難しい問題になると思われます。

解決策としては、手本を実際に練習する大きさ(最初は半紙4文字大か6文字大)まで拡大して、自分の書いたものと重ね合わせてみる、等の方法が考えられますが、皆さんそれぞれの方法で工夫してみて下さい。


「形臨なんてバカバカしい。自分なりの解釈で意臨するぞ。」

と始めから鼻息荒く意気込む人もいるでしょうが、悪い事は言いませんから止めておいたほうが賢明です。

こんな説教じみた事を言うと、決まって

「清代諸家の臨書した『曹全碑』なんて一つも原本に似ていないじゃないか」

と屁理屈をこねる人がいますが、書法史に名を残すような天才のケースを我々凡人に当てはめてみても何の意味もありません。

それに、彼らは間違いなく、我々の数十倍も数百倍も、地道な努力を積み重ねていますよ。

その積み重ねによって築かれた基礎の上にこそ、それぞれの発展形としての表現が生まれるのです。

この際、浅はかで即席な考えは捨ててしまいましょう。

それが結果として、一番の近道だったりするのですから。


逆筆などの具体的な技法の詳細については、最近では様々な技法書もあるようですので、ここでは触れません。

ただ一つだけ。

我々のように楷書で育ってきた人間にとって、隷書の造形は全く異質の世界です。

特に横画については、強い右上がりの感覚を、心底まで体が覚えこんでしまっている人が殆んどだと思いますので、横画を引く際には、最初は右下がりに書くくらいの意識で丁度良いと思います。


『曹全碑』、見なくても書けるようになるくらいまで頑張って下さい。

さて、次回は何の話にしましょうか。

アップする度に「久しぶり」なんて事にならないように出来るだけ頑張りますので、気長にお待ち下さい。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

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誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

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posted by 華亭 at 19:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨書のすすめ 隷書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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