2006年09月17日

何から始めれば?行・草の場合

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「臨書のすすめ」と題して古典の名帖を紹介していますが、教室などに通うことなく一人で勉強をしている方にとっては、

「こうやって紹介されても、どれからやればいいのか分からない」

という場合も多いと思います。

あまり難しく考えずに、取りあえず自分が興味を持ったものから始めればいいのですが、それだけでは余りに不親切なので、私の経験を書いてみたいと思います。

参考になるかどうかは分かりませんが、一つの例として捉えてください。

今回は行・草に関して、私の臨書遍歴を思い出してみます。


私の場合、行書は『集字聖教序』、草書は『書譜』から始めました。

この二本に決めたのには特に理由があったわけではありません。

師からの指示でした。

最初は師に折手本を書いていただいていたのですが、程無く

「こんなペースでやっていては一生かかっても埒が開かない」

と気付きます。

そこで、その後は師からの指示を待たず、自分で臨書を進めていく事にしたのです。

但し、臨書したものを師に添削してもらう事は続けました。


まずは王羲之・王献之の各帖や『淳化閣帖』で一度視点を晋に設定してから、上は魏晋から下は北宋までと決め、自分の頭の中に中国書道史の年表を想定し、大まかなポイントを定めてから、その間を少しずつ埋めていく、という形で進みました。


テキストにした影印本は二玄社『書跡名品叢刊』です。

『書跡名品叢刊』は数年前に装いも新たに復刊されましたが、私が使用していたのは当然旧版です。


ご存知の方も多いでしょうが、旧版の『名品叢刊』は新版のように時代順には並んでいませんでした。

ところが、目録は便宜のためか時代順に掲載されていたので、目録をコピーし、臨書したものにチェックをしていくことにしました。

少しずつ臨書済みのチェックが増えていくのがとても嬉しかったことを覚えています。


二王から智永、孫過庭、米元章へと続く、いわば主流となる流れをまず押さえ、その後で、張旭から懐素や顔真卿、蘇軾や黄山谷へと続くもう一つの流れを掴みました。


ここまで読んで、人によっては

「顔真卿はそんなに後回しだったの?」

と思った方もいるかもしれませんね。


顔真卿に関しては、それまで全く触れたことが無かったというわけではないのですが、私の場合、先にも書いたように臨書をしながら中国書道史の流れを把握してしまおうと考えていたので、まず二王からの流れをしっかり押さることに専念しました。

王羲之以降の中国書道史は、それぞれの羲之との距離の取り方によって考えていくと分かりやすくなりますし、その視点無しには成立しないと言っても大げさではありません。

更に言えば、中国の書は、北宋までの展開によって一通りの表現的可能性の試行錯誤が一巡します。
南宋以降というのは、北宋までの展開をもとして進んでいきますので、北宋までの流れを掴んでおかないと、その後の趙子昂、文徴明、徐青藤、董其昌、更には王鐸や傅山などの明末清初への展開が理解出来ません。


余談となりますが、最近ではいきなり明清に手を出す人も少なくないのかもしれません。

ここでお決まりの苦言を呈するつもりはありませんが、それでもやはりその方法は乱暴過ぎると言わざるを得ません。

王鐸を理解するには徐渭や董其昌を知っている必要がありますし、徐渭や董其昌を理解するためには文徴明や趙子昂を知っている必要があります。

同様に、文徴明や趙子昂を理解するためには米元章を知らなければなりませんし、米元章を理解するためには魏晋からの流れ、分かりやすく言えば王羲之からの流れを掴んでおく必要があるのです。


閑話休題。

私は魏晋から北宋までを繰り返し臨書し続けました。

「一本最低10回全臨」

というルールを決め、『名品叢刊』をテキストに臨書に明け暮れました。

当然全て形臨です。

10回という回数に理由はありません。

10回で足りる話ではないことはよく分かっていましたが、

「とりあえず最低10回」

と決めて始めました。


ついでですから、テキストを開く度に解説を読み、その書を書いた人物の生没年とその書が書かれた年を確認しました。

最低10回全臨するまでには、それこそ何十回何百回もテキストを開くわけですから、その度に確認していれば、10回の全臨が終わる頃にはすっかり覚えてしまっています。


こうして魏晋から北宋までの『名品叢刊』のうち主だったものを臨書してから、時代を下ったものへと臨書の対象を移していきました。

「主だったもの」って?

という質問が出そうですが、具体的に名前を連ねることは煩雑に過ぎますので割愛します。

臨書するかどうかの境目としては、唐で言えば、太宗や高宗はやりましたが、則天武后は見ただけで済ませたように記憶しています。


さて、今回は行・草について書きましたが、実際にはこれらと並行して楷書や隷書の臨書もしていましたので、整然と順序良く進んだわけではありませんが、大まかな流れとしては以上のようなものでした。


みなさんの参考になるでしょうか?

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。
ラベル:書道
posted by 華亭 at 19:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨書のすすめ 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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