2006年09月19日

書譜

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今回は孫過庭『書譜』です。

草書の1回目ということで、実は『書譜』にするか、王羲之『十七帖』にするか悩んだのですが、字数が圧倒的に多いことと、拓本ではなく墨蹟であること、という二点から、『書譜』を選びました。


他の回でも書きましたが、私の場合には、草書の臨書は『書譜』から始めました。

これまた師からの指示でしたので、『書譜』を選んだ理由など何もありません。


実は「臨書のすすめ」というタイトルで書き始めた時、行書と草書についてはとても悩みました。

というのも、正直なところを言えば、行・草に関しては

「一人勉強は無理なのではないか?」

という気がしているからです。


行・草は単純に筆法だけに目を向ければ、楷書に比べて遥かに単純です。

しかし、実際に書く段になると、一点一画止まりながら、その長短や大小などを自分自身で確認しながら書き進めることの出来る楷書に比べて、行・草の場合にはそれが許されません。

しかも、文字造形のバランスを成立させている要素が極めて複雑な為、古典と呼ばれる名帖に初学者がどれほど目を凝らしてみたところで、どこがポイントなのかが、恐らく全くと言って良いほどに分からないであろうと思われるからです。


古来書聖と呼ばれる王羲之ですが、初学者が『蘭亭叙』を見た時に感じる正直な感想とは恐らく

「こんなに曲がったり歪んだりしているのに、どこがそんなに上手いの」

といったものでしょう。


それでも行書であればまだ、多少でも自分の文字造形の感覚に照らし合わせて見ることが出来るかもしれません。

例えその見方がどれほど見当違いであったとしてもです。

ところが草書の場合、

「そこに書かれているものが上手なのか下手なのか」

という事を感じることすら出来ないと思われます。


現代の人達にとって、草書はあまりにも日常とかけ離れた書体となってしまっているので、草書を目にする機会など殆んど無いまま生きてきます。

それでいきなり

「これが『書譜』ですよ。名品ですよ。」

と言われても、

「はぁ・・・そうですか・・・」

としか言いようが無いはずです。


「この書のこの文字はこの部分がこう曲がっているからこそ、バランスが保たれている。」

「この文字のここがこの長さだからこそ、この空間が生かされる。」

といったようなポイントの解説を、一つ一つ聞いた上で臨書をすることで、

「なるほどなぁ」

と感じながら、見る目を養っていく。

という手順で学ぶ事が望ましいと思うのです。


一人勉強の場合、それが出来ません。

かと言って、このブログでその具体的なポイントを、一字毎に詳細に解説していくことは正直な話ちょっと無理です。(そういう内容を目指して始めたものではありませんのでごめんなさい)


色々と考えたのですが、それでも最近は具体的な臨書のポイントを解説した本もあるようですし、今までこのブログで繰り返してきたとおり

「とにかく形臨」

に徹してもらうことで、少しでもポイントに近づいていただけると信じ、話を進めることにしました。

「そこに書かれているものが上手なのか下手なのか」という事を感じることすら出来ない、という点を逆手に取って、「素直に見たままを書くしかない」という利点にする為にも、とにかく形臨です。


ただし、一つだけ覚悟して下さい。

直線を主とした筆画によって造形が構成されている楷書に比べて、曲線を主とた筆画によって構成されている行・草書の場合、自分で書いたものを自分自身で添削する難しさは桁違いに難しくなります。

余程注意深く自己添削しないと、せっかくの臨書の意味が無くなってしまいますので注意して下さい。


草書でも基本はやはり

「同じ筆圧で同じ速度」

で書くことです。

特に、行・草書で問題になりやすいのが、転折部、つまり曲がる部分です。

次のサンプルを見て下さい。

サンプル

上はA〜B〜Cと、途中で筆が止まることなく、同じ筆圧のまま書かれています。

下はA’B’C’だけに筆圧が強くかかり、その間がすっぽ抜けています。


同じサンプルを裏から見た画像を見て下さい。

サンプル

今お話したことがよく分かるはずです。

そして、B’で一度、筆が止まってしまっています。

これではいけません。

全ての転折がBのようになっているわけではありませんが、楷書とは違う、ということを肝に銘じて下さい。


それから先程

「行・草書の場合、自分で書いたものを自分自身で添削する難しさは桁違いに難しくなります。」

と言いましたが、その際のポイントを一つだけ。


皆さんついつい、自分の今書いた黒い部分にのみ注意が集中してしまいがちですが、文字造形によって生まれた白い部分に注意を払って下さい。

例えばひらがなの「の」で考えてみます。

サンプル

上のサンプルは小学生が書いた「の」を加工したものです。

「の」の字形ではなく、ピンクの部分に注目して下さい。

左の「の」と右の「の」とではピンクの部分の形が全く違っていることが分かると思います。

「の」を書こうとするのではなく、ピンクの部分の形に細心の注意を払いながら書くと、結果として、書き上がった「の」の形が全く変わってくるのです。


この感覚は慣れていない人には始めのうちは少々難しいかもしれませんが、草書に限らず全ての場合に当てはまる極めて重要な感覚なので、この機会に是非体得してしまいましょう。


『書譜』は極めて字数が多いので、ちょっとやそっとでは全臨出来ないと思いますが、だからこそ、頑張った後には多くの成果が待っているはずです。

その為にも、自己添削は厳しく、しっかりとやって下さい。


今回は話が随分と脇道へ逸れてしまいました。

さて、次回は何にしましょうか。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。
ラベル:書道
posted by 華亭 at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨書のすすめ 草書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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