2006年08月16日

基本って何?その2

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前回は

「筆圧を一定に保ったまま線を引くことが出来る」

これこそが唯一にして最大の「基本」。

というところで話が終わってしまったので、今回は早速その続きです。


にじみやすい紙ににじみやすいマジックペンで「一」を書いてみましたか?

どうなりました?

「一」の最初と最後だけがにじんでいないでしょうか?

にじみ方にムラがありませんか?

もしもそうなっていたら、残念ながら×です。


何故ならそれは、最初にペン先を紙に置いた場所、つまり起筆(始筆)と、最後にペン先の動きが止まった場所、つまり収筆(終筆)だけに筆圧がかかって、ペン先が移動していた部分、つまり送筆では筆圧が抜けちゃってる、という証拠だからです。

これはマジックペンであろうと、毛筆であろうと、話は全く同じ事です。

毛筆の場合には半紙に毛筆で「一」と書いてみて、それを裏返して見ると分かりやすいですね。


「でも、私が習っている教室では、トン・スー・トンと習ったけど・・・」

という人がいるかもしれませんが、実はそれこそが諸悪の根源!

諸悪の根源なんて言うとあちこちから抗議のコメントが殺到しそうだから補足しましょう(汗)


「トン・スー・トン」自体が間違っているというよりも、それだけで説明するには余りに言葉足らずなのです。


話を毛筆に限定すると、筆使いを覚えるという事は、端的に言い換えれば、

「自由自在に筆をコントロール出来るようになる」

という事に他なりません。

もっと具体的に言えば、線の太さ細さや長さ、角度、それらを自分の思ったとおりに(初心者の方で言えば、「お手本にそっくりに」)書けるようになる、という事になります。

それらを実現するためには、その為に最適な筆圧や運筆の速度があるわけで、それらを習得していくのが所謂筆使いの練習になるわけですが、その中で最も単純で基本的な動きとなるのが、

「筆圧を一定に保ったまま線を引くことが出来る」

という動きなのです。(やっと本題に辿り着きました(汗))


この基本によって、筆にかかった筆圧の微妙な変化や違いを体(指先)で感じ取れるようになっていきますし、筆の弾力、筆から紙に伝える力、紙から返ってくる筆の反発力、それらを感じ取れるようになっていくのです。

それが結果として、自分の書いたものや人が書いたものを見た時に、しっかりとした線が引けているのかどうかを判断出来る目を育てる、ということにも繋がるのです。


筆使いの練習というのは、楽器演奏やスポーツの練習と同じで、体に筋肉の使い方を覚えこませる、ということです。

「筆圧を一定に保ったまま線を引くことが出来る」

というのは、バイオリンで言えば「音が出せるようになる」ということに相当するかもしれません。


筆使いと言いましたが、これは何も毛筆に限った話ではなくて、ペンでも鉛筆でも何でも同じなのは既に話した通りです。

私は、「通信教育のペン字講座をやって字が上手くなった」という人に未だかつて会った事がありませんが、これは実は当たり前の話で、皆さんはペン字と言うと「キレイな字の形さえ覚えれば字が上手になる」と思い違いしているからなのです。

字の形は当然大事なんですが、それ以前に、体(腕・指)から筆記具へ、筆記具からから紙へと力を伝えて実際に字の形を描く手の動き、筋肉の動きをコントロール出来るようにならなければ、上手な字なんてそれこそ一生書けるようにならないのです。


ところが、毛筆はともかく、ペンや鉛筆は誰しも子供の時から使っているから、今更「筋肉の動きをコントロール」とか言われても、皆さんピンとこないんですね。

「自由自在に動かせている」と自分自身で思い込んでいるからです。

先程のバイオリンで言えば、まともな音を出すことすら出来ていないのに美しいメロディを奏でようとしても、それは無理な相談というものでしょう。

「自由自在に動かせている」

それが思い込みなんだということを認識してもらう為に試してもらったのが、「一」なんですね。


ここまで分かった上で、もう一度、筆圧を一定に保ったまま「一」を書いてみましょう。

最初から最後まで、同じようににじみにムラの無い線が引けたなら合格です。

イメージとしては、彫刻刀のようなもので板に最初から最後まで同じ深さでグーッと彫り進むような感じで書いてみて下さい。


たった一本の線。

それでも今まで自分がどれ程意識せずに書いてしまっていたのかが分かっていただけたでしょうか?


筆圧を一定に保つ為に一番簡単な方法は、送筆の速度を一定にすることです。

それも、慣れるまではなるべくゆっくりと。

起筆でかけた筆圧のまま、一定の速度で動かせば、収筆まで一定の筆圧を保ちやすくなるからです。

いつでも一定の筆圧、速度で書いた線でなければならない、と言うのではありませんよ。

一定の筆圧、速度で書くことすら出来ないのに、筆を自由自在に動かすなんてことが出来るわけがありませんし、変化に富んだ線なんて書けるわけがないのですから。


「トン・スー・トン」

を言葉の響き通りにやってみようとすると、殆んどの人が送筆部での筆圧がすっぽ抜けた動きになってしまって、いつまでたっても筆の弾力、筆から紙に伝える力、紙から返ってくる筆の反発力、それらを体で感じ取ることが出来るようになりません。

「トン」と筆を置いて、「スー」と勢いを付けて引っ張って、「トン」と押さえるだけでは、いつまで経ってもしっかりとした線は引けるようにならないのです。

その感覚が分からないままでは、ペンで書こうが筆で書こうが、楷書を書こうが草書を書こうが、ちっとも書けたことにならないのです。


それでは何故楷書を基本として習うのか?

それは、初心者が練習する際に、一点一画止まりながら、その大きさ、太さ、方向、長さ等を確認しながら、筆圧や速度を感じながら、一本一本の線を引くという練習がしやすいからなのです。


随分と長くなってしまいましたね(汗)

のんびり行こうと思って始めたのに、最初から飛ばし過ぎました(苦笑)

でも、この辺の話はそれこそ「基本」であり前提ですから、きちんと話しておかないと、これから先、私の話が理解出来なくなってしまいますので。

今回はここまで。

最後まで読んで下さったみなさん、有難う御座いました。

そして、お疲れ様でした。

それではまた。
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あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。
posted by 華亭 at 08:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
初めまして。調べ物があり、検索していたらこちらのブログにたどり着きました。とても興味深く、最初から拝見させて頂きたいと思います。
一定の筆圧。目からウロコでした。確かに始筆と止めの滲みが目立ちます。どうしても書き始めは緊張して力んでしまうので、逆に力を入れすぎないように意識して書いてみようと思いました。ありがとうございます。
Posted by aosora at 2016年07月05日 18:46
aosora様

初めまして。コメント有難う御座います。

放置が続くブログです。
話が少々理屈っぽいのが自他共に認める難点ですが(苦笑)、御暇潰しには丁度良いかと思います。

感想など御座いましたら、またお聞かせください。
Posted by 華亭 at 2016年07月05日 23:56
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