2010年11月12日

知識って本当にいらないの?その2

これまでの記事の一覧はこちらへ
記事の一覧です

通信添削についてはこちらへ
通信添削について』

メールによる御質問はこちらのアドレスへ
nonbirishodo@mail.goo.ne.jp

----------------------------------------------------------

今回は前回の続きで、知識としての書道史の必要性について考えてみたいと思います。

因みに今回は固有名詞がバンバン出てきますが、それらについての解説は一切しませんのでお許し下さい。


早速ですが、一つの具体例として王鐸を挙げてみましょう。

王鐸に限らず明末清初の書の場合、いきなりそれから入ってそればかり、という人もいるのではないでしょうか。

しかし、(随分前に似たような事を少しだけ書いたような気がしますが)王鐸の書を理解するにはどうしても米元章や顏真卿の書を知っておく必要がありますし、米元章や顏真卿を理解するには当然王羲之を知らなければなりません。

言うまでもない事ですが、王鐸の書は彼以前の様々な書の影響下にあるわけですから、それを知らないままでは、彼の書のどこまでが歴史的必然であり、どこから先が彼自身の独自性なのか、という事が分からないままになってしまいますし、そのような曖昧模糊とした認識状態でいきなり

「これが王鐸の特徴です。」

と言われたとしても、今一つピンとこないでしょう。

彼がどのような書からどのような影響を受けてきたのかを理解する事によってこそ、王鐸自身の独自性も浮かび上がって見えてくるのです。


先程米元章の名前を挙げましたが、米から羲之まで遡ろうとすれば、そこには必然的に孫過底や智永、初唐の三大家の名前が出てきますし、逆に米から王鐸へと下ってその間を繋ごうとすれば、趙子昂、文徴明、董其昌といった名前を避ける事は出来ません。

更には顏真卿について言えば、羲之からの流れと平行するように流れる唐以降の顏真卿からの流れと、その流れに対する先に挙げた人達との関係性も把握しておく必要があります。(実際には王鐸の書を理解する上で知っておくべき人物は当然他にもいますが、話が複雑になりすぎるので、とりあえずこの辺だけにしておきましょう。)

そういった理解の上に立ってこそ、何故王鐸の書があのようなものとなったのか、といった事に対する答えの一端も見えてくるのです。


羲之以降の中国書道史は、ある意味では、概念化形骸化してしまった羲之書風(羲之の書そのものではなく、あくまで「羲之書風」)に対してどのようにして生気を取り戻すのかについての試行錯誤の歴史と言えます。

概念化形骸化してしまった羲之書風に対するアンチテーゼを、各々の時代の天才達がどのような形で具現化してきたのか、その歴史と言っても良いでしょう。

更に極論すれば、それは書そのものに生気を取り戻す為の、天才達の挑戦の歴史に他なりません。

つまり、その歴史を学ぶという事はその試行錯誤や挑戦の過程を学ぶという事であり、それは「書とは何か?」という事を学ぶ事にすら通じるのです。


今回は王鐸を例に挙げて話してきましたが、話は羲之以前でも清代諸家でも、日本の書道史でも同様です。

そこにあるのは数限りなく繰り返されてきた試行錯誤と、時の流れという厳しい淘汰とを経てきた上での足跡です。

それに目を向けないままで済ませてしまうというのは、目を向けないどころか自分から固く目を閉じてしまっているようなものではありませんか。


書道史に対する理解と知識は、ついつい狭く偏りがちな我々の視野に俯瞰した視点を与えてくれます。

その視点に立ってこそ見えてくるものは決して少なくありません。

その意味で、知識としての書道史はやはり「必要」なのです。


ふぅ〜、疲れました。

今回は固有名詞だらけで何だかこのブログらしくありませんでしたね(笑)

もっと気楽に読んでもらえる話題はないか、考えてみます。

それではまた。

----------------------------------------------------------

初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

nonbirishodo@mail.goo.ne.jp


定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道 通信添削
posted by 華亭 at 06:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック