2010年01月13日

所要時間に於ける違いについての考察

これまでの記事の一覧はこちらへ
記事の一覧です

通信添削についてはこちらへ
通信添削について』

メールによる御質問はこちらのアドレスへ
nonbirishodo@mail.goo.ne.jp

----------------------------------------------------------

以前「たかが距離、されど距離」の回でも書きましたが、皆さん普段練習する時には、半紙や半懐紙などの大きさでの練習が中心という人が多いのではないでしょうか?

その一方で、いざ展覧会への出品作品となると、半切や更に大きいニ尺×八尺(以下ニ八)といった大きさに書く事もあるかと思います。

まぁ半切くらいなら、教室での月例課題等の為に、日常的に書く機会もあるのかもしれませんね。


今回考えてみたいのは、普段書いているものと展覧会等への出品作品とでその紙の大きさが全く異なる場合の、両者に於ける

「一枚書くのに要する時間」

の違いに起因する問題についてです。


たかが距離、されど距離」の回では半紙と半切以上とを例に挙げ、両者に於ける「作品とそれを見る人との距離」についての考察を行いましたが、今回の問題は時間の違いに起因していますから、仮に普段と出品作品等とで紙の大きさが変わらずとも、そこに要する時間の大きな差異があるようなものを書く場合には、やはり今回の話に当てはまります。

但し、紙の大きさが違うとして話を進めた方が具体的にイメージしやすいでしょうから、今回は半紙とニ八とで考えてみましょう。


普段の練習では半紙に6文字大で書いているとします。

この場合、書体によっても違いますが1枚書くのに要する時間は数十秒から数分といった感じでしょうか。

これに対して二八では書く文字数が半紙の時より増える場合が多いはずですから、単純に文字数からのみ考えても、1枚書くのに要する時間は半紙の場合よりも長くなるでしょう。

それこそ数十から百を超えるような文字数を楷・隷・篆といった書体で書く場合、1枚書くのに2時間かかるような事も珍しくないはずです。


ここで問題になるのが、例えば1枚書くのに2時間かかる二八を書こうとする時、普段半紙に書いている時の集中力では役に立たない、という事実です。


「半紙での練習を2時間続けてやれば同じ事だろう。」

と思うかもしれませんし、費やす時間という意味では確かに同じようですが、やはりこの両者には歴然たる違いがあります。


一番単純な話として、半紙なら

「あ!間違えた…」

となっても簡単に

「もう1枚。」

と思えますが、二八の場合、なかなかそう簡単にはいきません。

極端な話、2時間かかって書き進めてきて最後の1文字で間違えでもしたら、目も当てられませんよ(苦笑)


その他にも、二八の場合には書く際に留意すべき点が半紙の場合と比較して桁違いに多くなります。

しかもそれらについての極めて高い意識を持続しながら2時間書き進めなければなりません。

それを実現する為には、体力的にもやはり半紙で2時間書くのとは別種の体力が必要になると言ってよいでしょう。


半紙に6文字大書く場合を陸上競技の短距離走に例えたとすると、2時間かけて書く二八はマラソンのようなものですから、短距離走の練習を2時間するのとマラソンの練習を2時間するのとでは、同じ2時間でもその内容は必然的に違うものになるでしょう。

マラソンには短距離走には無い、長時間に対する「持続力」という要素が求められるからです。


つまり、2時間かかる二八には2時間かかる二八ならではと言うべき要素が心身共に要求されるのです。

そして肝心な事は、

「2時間かかる二八を書く為のそれは、実際に2時間かけて二八を書く事でしか得られない」

という点です。


ですから普段半紙での練習しかしない人が、展覧会に出すからといって付け焼き刃で2時間かかる二八を書いてみても、

「2時間かけて二八に書く」

という行為そのものに慣れるまでに時間がかかってしまい、実際の書の出来にまで話がなかなか到達しないうちに締め切り期日がきて時間切れ、という事になってしまうわけです。


思い当たる人、いませんか?

半紙の達人が二八でも同じようにいくかと言うと、話はそれ程単純ではないのです。

あのボルト選手も、世界一足が速いと言ってもマラソンでも世界一というわけにはいかないですよね。

それと同じ事です。


ですが逆に言えばこれは慣れの問題に他なりません。

普段半紙を書く時には何故臆する事なく書けるのか?

それは慣れているからです。


それなら2時間かけて二八を書く事にも慣れてしまえば良いわけです。

毎日とはいかなかったら1週間に1度でも、それも大変なら1ヶ月に1度でもいいから、実際に二八を2時間かけて書いてみるのです。


この時大切なのは、書いている途中で誤字脱字等の致命的な失敗をしてしまった場合以外、

「あ!上手くいかなかった!」

と思っても、そこで止めてしまわないで最後まで書き通す事です。

書き通す事によってこそ、色々な意味での感覚が、つまりは体が

「2時間かけて二八を書く」

という行為に慣れていくのですし、書き通すからこそ気付く事が出来る部分もたくさんあるからです。

ですから最後まで書き通して下さいね。

こういった事を続けていれば、いざ展覧会への出品作品を書く時になっても、慌てずに済むでしょう。


普段やっていない事にも関わらず、出品作品だからといってやってみたところで、突然出来るわけがないんですよ。

それを承知で、展覧会への出品を「普段は書かない二八を書く機会」として捉えている、という考え方もあるでしょうが、それはまた別の話ですから。


さて、今回もいつもの如くここまで実に当たり前の話をしてきましたが、

「当たり前であるのなら、その上で実際にそれに対処すべく普段から何かしているのか?」

と問われたら、

「特に何もしていない…」

と答えざるを得ない人、多いのではないでしょうか。


今回は時間にフォーカスして話を進めましたが、同様の慣れの問題については「書く字の大きさ」等の違いでも起こります。

これについても機会があったら改めて書くかもしれませんが、今は皆さん自身で自分の場合に当てはめて色々と考えてみて下さい。


今回はここまで。

それではまた。

----------------------------------------------------------

初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

nonbirishodo@mail.goo.ne.jp


定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道 通信添削
posted by 華亭 at 02:51| Comment(2) | TrackBack(0) | 考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ほぼ全ての記事に目を通しました。
とても参考になりました。
 「ゆっくりゆっくりお手本そっくりに書くこと」
 「お手本をとにかくよく見ること」
 「自分が書いたものとお手本をとことん見比べること」
の三つを、とりあえず実践して、(自分の中では)
飛躍的に上手に(なった気がします)!!。
ありがとうございます。(私の場合はペン字ですが・・・)

最近記事が更新されていないようですが、お身体の調子が
悪いのが原因でないことをお祈りしています。

楽しみにしています。
Posted by sachiyoshi at 2010年03月04日 00:31
sachiyoshi様

コメント有難う御座います。
返事が遅くなり申し訳ありません。

ほぼ全ての記事に目を通して頂けたとの事、有難う御座います。

地道に続けてきたブログではありますが、それでもかなりの分量だったと思います。

少しでも参考になったのでしたら嬉しく思います。

随分とアップ出来ずにいましたが、また少しずつアップしていきたいと思っていますので、
宜しくお願いします。

御感想、御質問などありましたらどうぞ御遠慮無く。
Posted by 華亭 at 2010年03月10日 00:14
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック