2009年11月12日

真っ直ぐ。その3

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「東京都」の3文字を例に挙げてここまで話を進めてきましたが、漸く「都」まで辿り着きました(汗)


実は「東京都」3文字の中でこの「都」が一番の難題です。

というのも、「東」や「京」は中心の目安になる縦画が含まれている字でしたが、「都」にはそれがありません。

「都」のように偏と旁で構成されている字の場合、中心の目安と出来る画が無いからこそ、これまでの話以上に「書く前」の意識を明確にしておかなければならないのです。


「都」の場合について大雑把に言えば、中心線(下図の黒い線)よりも左に偏(水色)を、右に旁(ピンク)を書くのが一番大きなポイントでしょう。
偏と旁真ん中

確かにさんずいやにんべんのように画数の少ない偏の場合にはこの限りではありませんが、その場合でも偏と旁のバランスで中心を作らなければならないという事には変わりはありません。

これは頭で考える以上に難しい事です。

「文字の体幹」とでも言うべきものを自らの感覚で感じ取りながら書かなければならないからです。

その為には数多くの字を書きながら、少しずつその感覚を自分の中に蓄積していくより他に無いのですが、只闇雲に書いていても意味がありません。

一点一画に対して常に高い意識を持ちながら書いていく事によってこそ、初めて蓄積される感覚であり、その地道な積み重ね以外にはこの感覚を体得する術は無いと言って良いでしょう。

その為の第一歩として重要なのが、やはり何と言っても、一画目の入筆位置なのです。


偏と旁で構成されている字の場合、この一画目の入筆位置が左にずれてしまうと偏が左に寄り過ぎて、それにつられて旁も左に寄ってしまい、結果として字全体が左にずれてしまう事になりますし(左下図)、逆に入筆位置が右にずれてしまうと今度は偏が中心線をはみ出して、本来なら旁がくるべき位置を占領してしまい、旁が右に押し出されて、結果として字全体が右にずれてしまう事になります。(右下図)
偏と旁左寄り  偏と旁右寄り

ですからこの辺の事までよく考慮してから1画目の位置を決めなければなりません。

「都」の1画目は横画ですから、偏である「者」の部分の書き上がった状態をよくよく想定してから入筆位置を決めましょう。


皆さんの書いたものを見ていると、入筆位置が中心線から離れ過ぎている場合が多いようですから、それを一つの傾向として覚えておくと良いかもしれません。


それから偏と旁で構成されている字でありがちな失敗が、1画目の位置は大丈夫だったにも関わらず、偏の一部分が右に張り出してしまい、そのせいで旁が右に押し出されてしまう、というパターンです。
偏と旁右はみ出し

これは今回の「都」の偏である「者」や、きへんのように、偏の中に横画や斜画が含まれているものの場合に起こりやすいという事を覚えておきましょう。

「都」で言えば3画目の横画が長過ぎると、このような状態になります。

つまり、3画目までの「土」の部分を「土」という字の形そのままのようにに3画目を書いてしまうと、3画目の右側の長さが長過ぎてしまい、右側にはみ出した3画目によって旁が押し出されてしまうのです。
偏と旁右はみ出しその2


ですから「都」の偏は中心線をはみ出さないように書いておく事もポイントの一つです。
偏と旁真ん中その2


ここまでの話の上で無事に偏の「者」が書けたとして、次に旁を書くわけですが、この時に偏との間隔を空け過ぎてしまうと、仮に偏の位置や形が丁度良く収まったとしても、字全体が書き上がった時に右にずれたように見えてしまいますから、これまた注意が必要です。
偏と旁中空き


難題の「都」について以上のような幾つかのポイントについて話してみました。

更に詳細なポイントについて説明する事もまだまだ可能ではありますが、最低限上記のポイントに気を付けながら書けば、「都」は中心から大きくずれる事無く書く事が出来ると思います。


さて、ここまで「東京都」と書いてきましたが、3文字縦に真っ直ぐ並びましたか?

今は目安の中心線が引いてある場合として話をしていますが、実際には目安の中心線など無い状態で書かなければならない場面も多いでしょう。

この場合にもここまで話してきた以外の特別な理屈など必要無いのですが、「必要無い」と言うだけではあんまりでしょうから、次回は目安の中心線が無い状態で書く場合についての話をしてみたいと思います。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


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ラベル:書道 通信添削
posted by 華亭 at 20:36| Comment(4) | TrackBack(0) | 考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
華亭さま、いつも勉強させて頂き感謝しております。

ど素人な質問で大変恐縮なのですが、書家の方は筆のどの部分を意識(注視)しておられるのでしょうか?

私がいつも迷うのは、筆のどの部分を中心線に合わせるかなのです。

鉛筆やペンであれば、筆記具の尖った先を中心線に合わせやすいのですが、筆の場合、ついつい穗先(命毛)部分を中心線に合わせがちになってしまって、縦画が右側にズレちゃうんです。

これじゃあアカンと思って穗先を中心線の左に置いたりするのですけれども、線の太い細いによって微妙に穗先を置く場所が違ったりして、いつも失敗してしまいます。

そもそも、筆の穗先(命毛)を中心線に合わせるということ自体間違っているのかな。
Posted by win at 2009年11月13日 10:46
win様
コメント有難うございます。

早速御質問の件ですが、私達が筆の何処を見ているかというのは後回しにして、先ずは筆で書く時の中心線への合わせ方についてです。

これは「どうしたら良いか」という前に、ずれてしまう原因についてもう少し考えてみましょう。

この原因は一つしかありません。

それは

「これから書こうとしている線の太さがしっかり想定出来ていない。」

というものです。

>筆のどの部分を中心線に合わせるか

というwin様の疑問が送筆時での話だとすると、例えば側筆と直筆とでは筆先の通る位置が違いますから、中心線に対する筆先の位置も変わってきます。

しかしどちらの場合にしても、これから書こうとしている線の太さをしっかり想定する事が出来ていれば、問題は無いはずです。

例えば楷書の場合などは、入筆での点の大きさによって送筆時の線の太さがおおよそ決定されますが、この点の大きさがしっかり想定出来ていないと、結果として線の太さも意図したとおりにならず、書き上がった線が中心線の右や左にずれてしまう事になります。

今「点の大きさ」と言いましたが、それはつまりは「点の形」という事に他なりません。(「形の話」の回参照)

入筆によって出来る「ある大きさを持った形」としての「点」を中心線からずれずに「描こう」とすれば、入筆時に筆先を中心線からどのくらいの距離に置けば良いのか、というのは必然的に導き出されるはずです。

「それは分かっているんだけど、入筆の微妙な力加減によって点の大きさが変わってしまって…」

という事でしたら、それは思い通りの、つまりは書く前に想定した通りの大きさや形に書けるようになるまで練習するしかありません。

入筆時の点が思い通りの大きさや形に書けるようになったとして、その後の送筆部分については先述の通り、側筆と直筆とでは話が異なりますのでここで一概には申し上げられません。

以上のような説明で筆で書く時の中心線への合わせ方についてはお分かり頂けましたでしょうか。


さて後回しにしたもう一つの件ですが、実は教室でも時々同様の質問を受ける事があります。

普段書いている時にはその辺りの事は全く無意識なので、質問を受ける度に改めて考えてみるのですが、本当のところ自分でもよく分かりません(笑)

しかし、驚かれるかもしれませんが、「筆は見ていない」という事だけは間違い無いように思います。

筆ではなく、今自分が書いているものの方を、つまりは紙面を見ています。

勿論入筆位置を決める瞬間には筆先も視界の中心に入っているわけですが、それでも焦点は筆先ではなく紙の方に合っているようですね。

これに関しては何とも掴み所の無い回答しか出来ずに申し訳ありません。


どちらの回答も今回のような説明では腑に落ちないかもしれません。

その場合にはどうぞ御遠慮無く再度御質問下さい。

Posted by 華亭 at 2009年11月13日 23:18
華亭 様

早速のご回答ありがとうございます。

筆のどの部分かということは別にして、紙面に対する「点」の「入筆」に注意をはらう(気を入れる)ことがとても大切だということがあらためてわかりました。
この辺はもっと書いて書いて書きまくって身体に覚えさせます。

生意気なことを言ってすみませんでした。

まだまだ未熟な私です。てんでダメですね。
Posted by win at 2009年11月14日 08:51
win様

>生意気なことを言ってすみませんでした。

とんでもありません。

私の表現がきつかったでしょうか?
気分を害されたのでしたらお詫び致します。

これからもどんな事でも結構ですので、御質問がありましたらお待ちしています。
Posted by 華亭 at 2009年11月15日 02:32
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