2009年10月10日

たかが距離、されど距離。その2

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話の途中で間が空いてしまい申し訳ありません(汗)

前回は「距離」という観点から、離れた距離から見る(見られる)事が前提となるような作品の場合

「その距離から見た(見られた)時に丁度良い出来になるように書く。」

という事について考えてみましたが、今回は話をもう少し実際的にしましょう。


前回、展覧会の例の中で墨の量に話が触れましたから、今回も墨の量を例にとります。

墨の付け方については以前「墨を付ける前に」「墨を付ける前に。その2」の回で今回の内容の前提となるような話をしていますので、未読でしたらそちらを読んでおく事をオススメします。


さて、今あなたは展覧会に出品する作品を書いているとします。

サイズは半切でも二八でも、とにかく「離れた距離」から見る事が前提となるようなサイズなら何でも良いのですが、とりあえず手頃な半切にしておきましょうか。


あなたは自分で書いている時には墨を充分に付けているつもりでしたが、教室で先生に見せたら

「全然墨が足らないよ。」

と言われてしまいました。

確かに教室の壁面にかけて、少し離れた所から見てみると、書いている時に自分で思っていたよりもずっと墨が少なく感じます。


「あれ〜?おかしいな?」

と思ったあなたは、

「今度こそ」

というつもりで墨をたくさん付けて書きました。


次の稽古で先生に見せたら

「まだまだ足らないよ。」

と言われてしまいました。

「え〜?」

と思いながら離れた所から見てみると、確かにやっぱりまだまだ少なく感じます。

「おかしいなぁ?書いている時には真っ黒にするつもりで書いていたし、実際そう感じながら書いていたんだけどなぁ…」


皆さんの中にもこのような経験をした事がある人がいるはずです。


このような事が起こる原因には二つあります。

先ずは「限界の越え方」が下手な場合です。

これについては「大きさ」という観点から以前「習い方。その4」の回で説明しているので、ここでは繰り返しません。


今回の話の中心はもう一つの原因の方なのですが、これは「書いている時の視点から紙まで距離」と、それを壁面にかけたような「離れた位置での視点から紙まで距離」とで、あなたの感覚に大きなギャップがある事に起因しています。

もう少し具体的に言うと、書いている時の視点で感じている墨の量と、離れた視点で感じる墨の量がずれているのです。


この状態では、書いている時に「たくさん付けた」と感じる程度の墨の量では、実際に離れた距離から見ると「まだまだ墨が少ない」という結果になってしまいます。

「たくさん付けた」と感じながら書いていてもそうなのですから、書いている時に「丁度良い」と感じているようでは、結果は離れて見るまでもありません。

これは裏を返せば、現時点でのあなたの感覚は、離れた距離から見ると「墨が少ない」ものになっているにも関わらず、それを書いている時には「たくさん付けた」「丁度良い」と判断してしまう、という事に他なりません。


話を戻しますが、半切等の大きなものの場合、離れた距離から見る(見られる)事が前提ですから、仮に書いている時にどれ程「たくさん付けた」「丁度良い」と感じていたとしても、離れた距離から見た時に「少ない」「足らない」「さみしい」のではダメ、なのです。

つまり、このギャップを少しずつでも埋めていかなければならないのです。


その為に出来る事。

それはとにもかくにも、書いている時に、今の自分が「たくさん付けた」と感じるよりも「もっともっとたくさん」付けてみる、という当たり前の試行錯誤を繰り返す事以外にありません。

簡単に言えば、書いている時に「明らかに付け過ぎ」と感じるような付け方をしてみる必要があるのです。


先述の「限界の超え方」という事で言えば、

「どの程度まで墨を付けたら、離れた距離から見ても本当に付け過ぎに見えてしまうのか?」

つまり、

「手元で見たら真っ黒けの付け過ぎ。離れて見てもやっぱり真っ黒けの付け過ぎ。」

となるような墨の量を少しでも早く体得してしまう事が肝心です。


この試行錯誤を繰り返していくと次第に、書いている時から、離れた距離から見た時の墨の量の見当が付くようになっていきます。

つまり、書いている時に「丁度良い」と感じる墨の量と、離れた距離から見た時に「丁度良い」と感じる墨の量とのギャップが無くなっていって、離れた距離から見たものが「書いている時に感じていたままの出来になっている」というように変化していくのです。


但し、これは自分で余程しっかりと意識しながら試行錯誤しないと、いつまで経っても変化していきませんから、心してかからなければなりません。


今回のこの話、日頃書を書いている自宅に、教室や更には展示会場と同じような広い空間があり、離れた距離から自分の作品をチェック出来る、という環境にある人の場合、日頃の練習から自然と近距離と遠距離との感覚のギャップを埋める為の試行錯誤を行っているのだ思われますが、現実には日本の一般的な住宅事情を考えると、多くの人はそうはいかないと思われます。

ですからこそ、しっかりとした意識を持った上での試行錯誤が必要なのです。


というわけで、ここまで前回から2回に亘って、「たかが距離、されど距離」として考えてきました。

正直に言うと、ある意味で「展覧会対策」とでも言えるような今回の話というのは余り好きではないのですが、日頃教えていて、このギャップがなかなか埋められないという人が極めて多いので、ここは私情は敢えて押さえて我慢して(笑)、ここで1度ちゃんと書いておく事にしました。

もう少し私好みに話を引き寄せれば、これは「机上鑑賞」と「壁面鑑賞」との違いの話に通じ、「机上鑑賞」から「壁面鑑賞」への変化が中国書道の変遷に齎した影響についての話にもなっていくのですが、この辺りまで行ってしまうとこのブログで扱う範囲を超えてしまうような気がするので、結局ここでは書けそうにありません(苦笑)

まぁ、大きなものを書いている人達にとって、今回の話が少しでも参考になるのであれば、私はそれで満足ですけどね(笑)


今回はここまで。

次回は別の話にしましょう。

それではまた。

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あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道 通信添削
posted by 華亭 at 03:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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