2009年06月23日

形の話

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「試食」のカテゴリ、久しぶりですね〜(笑)

今回は何を試食するかというと、形です。


形と言うと字形の事と思うでしょうが、今回はそうではなく「線」の形です。

これは毛筆で書いてこそ初めて問題になる話ですが、私がよく言う形臨をする際にも、この部分が見えてない人が極めて多いので、準備が少々面倒だったのにもめげず(苦笑)、頑張る事にしました。


以前にも少しだけ似たような話をした記憶がありますが、毛筆の場合、線に太さがありますから、同じ「一」の字一つ書いても必然的に線そのものにも形の違いが生じます。

この話の意味、分かるでしょうか?

ここが「???」だと話が先に進みません。

「線の形」とはつまり筆線の輪郭線によって出来る形の事です。

因みに、厳密に言えばペンや鉛筆で書いた線にも太さはありますが、線そのものに「面」としての性格を強く含んでいるか否かという意味では、毛筆の線とは異なりますし、ペンや鉛筆の線の輪郭を無理矢理とってみたところで当然筆線のような話にはなりませんから、今回の話の内容からは外れます。


と、「線の形」についてここまで前置きした上でこれを見て下さい。

  『九成宮醴泉銘』「三」図形     『孔子廟堂碑』「三」図形
       A            B

例えば

「Aの形をそっくり真似して描いて下さい。」

と言われて、Bのような形を描く人はまずいないでしょう。

そっくりそのままとまではいかなくても、少しでもAに近付けて描こうとするはずですし、その反対に

「Bにそっくりに」

と言われたら、今度はAのようには描きませんよね。

だって、AとBとでは形が全然違いますから。


それでは次にこれを見て下さい。

  『九成宮醴泉銘』「三」入筆     『孔子廟堂碑』「三」入筆
      1            2

1は歐陽詢『九成宮醴泉銘』、2は虞世南『孔子廟堂碑』の入筆部分です。

もうお気付きかとは思いますが、さっきのAとBは、この1と2を加工した画像です。

1と2とでは、形、全然違いますよね。


ところがですよ。

AとBの区別なら付けられた筈なのに、同じ事が字の一部分として目の前に現れた途端、皆さん1と2の区別が付かなくなってしまうのです。

それではダメなんです。


今回のような話をすると、大抵は

「そんな事を言われても、字形を追うので精一杯で、そこまで気が回らないよ。」

と言われてしまうのですが、その考えは根本的に間違っています。


そもそも字形というのは今回の話ありきなんですよ。

今回の話を無視した字形の話など、本来有り得ないのです。

何故なら、「入筆の違い」「線の形」も含めての「字の形」なんですから。


「入筆の違い」や「線の形」を置き去りにしたまま「字の形」だけ書こうとするのは、線自体に太さと形を持つ筆線の場合、完全に片手落ちです。

特に、「入筆の違い」と言うのは、「線の形」や字全体に於ける印象を決定付ける極めて大きな要因ですから、それを無視したまま「字の形」ばかりに注意してみてもどうなるものでもありません。

「字の形」は「線の形」によって導き出され、「線の形」は「入筆の違い」によって導き出されているのであり、その字形がその形である為にはその入筆である事が必要、と換言しても構いません。


今回は端的な例として歐陽詢と虞世南の特徴的な箇所を挙げましたが、早い話が『孔子廟堂碑』の入筆では『九成宮醴泉銘』の字形にはならないし、逆もまたしかりなのです。

何故なら『孔子廟堂碑』の入筆では『孔子廟堂碑』の線にしかなりません。

『孔子廟堂碑』の線の形で『九成宮醴泉銘』の字形を書こうと思っても、線の形がそれを許さないのであり、『孔子廟堂碑』の線の形で無理矢理『九成宮醴泉銘』の字形だけをなぞろうと思っても、それでは『九成宮醴泉銘』の印象を持つ字にはならないのです。

この話を裏返すようですが、両者の入筆の姿が似通っている字の場合、両者の字の持つ印象が非常に近いものになっているというのも、決して偶然ではありません。


普段の教室での稽古や私の通信添削を受けている人達は、皆さん今回のような話を毎回のように私に繰り返し言われ続けています。

恐らく皆さんうんざりしている事とは思いますが(苦笑)、それでも皆さんなかなかこの意識が徹底されません。

そのくらい、この「入筆の違い」や「線の形」の問題は極めて重要でありながらも見落とされがちな問題なのです。


これは、ペンや鉛筆などの筆記具で育ってきている事とも関係があるのかもしれません。

何故なら、ペンや鉛筆で書く場合、殆んどの人は「入筆の違い」や「線の形」についてなど、全くと言って良い程に意識する事無く書いているでしょうから。


ですが、もう一度繰り返しますが、「入筆の違い」、「線の形」、ホントに重要なんですよ。


とまぁ、このブログに似合わず画像を使いながらの真面目な説明でしたが、やっぱり疲れますねぇ(苦笑)

しかし、始めてしまった以上、ここで終わりという訳にもいきません。

「線の形」の次は「字の形」の話が待っていますから。


というわけで、次回は皆さんが「字形を追うので精一杯で・・・」と言う、その「字の形」についてのお話をしましょう。(現在準備中です。)

また疲れそうですが(笑)

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

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誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道 通信添削
posted by 華亭 at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 試食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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