2008年12月30日

舞台裏。その2

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さて、前回は前振りだけで終わってしまったので、きっとブーイングの嵐だったでしょうから(笑)、早速本題です。

今回私なりの『小篆千字文』を書くにあたって、最初にやったのは、説文解字(大徐本の一篆一行本)と小林斗あん氏の『小篆千字文』(以下『小林千字文』)とを比較検討してみる事でした。(どうしてここでいきなり『小林千字文』が出てくるのかについては「小篆千字文(その前に)」の回をお読み下さい。)

「比較検討って?」

そうですよね、それだけじゃ何をしたのか分からないですよね。

私はその為に、こんな事をしてみました。

千字文準備その1

見にくいかもしれませんが、ルーズリーフに説文の字形と小林千字文の字形とが書いてあります。

先ずは千字文全ての文字についてこれをやりました。

「それで?」

それだけです(笑)

つまり、改めて自分の手で書いてみる事によって、較べてみたのです。(この段階では筆で書いたわけではありませんが。)

まぁ、「これだけ」とは言っても、実際には書いていく中で説文と小林千字文とに異同があったりするので、その辺りをこの段階で色々な字書を使って調べておくわけで、その過程が極めて重要な事は言うまでもありませんが。

因みに、楷書の右隣の数字はブログの千字文にも附けてある1〜1000までの通し番号、説文小篆の上の数字は一篆一行本のページ、下の数字は白川静氏の『字統』のページです。(『字統』に未収の字については同じく白川氏の『字通』のページ。)

私はこのような事をする際、後に調べ直したい時などの為に、ひいた字書のページを必ず書いておく事にしているのです。


今回私は字を調べるのに『字統』をいわば検索エンジンとして使いました。

『字通』の方が収録文字数は多いのですが、机上でひたすら引き続けるには小さい方が良いので、『字統』にしました。(私の『字統』は小さい普及版の方です。)

『字統』(『字通』も同様)には説文の字形として大徐本のものが載っていますから、それを上段に書き、下段に小林千字文を書きました。

一篆一行本のページについては、私の『字統』や『字通』には一篆一行本のページが全て書き込んであるので(「字書(篆書の前に。その5)」の回参照)、それをここに転記しました。

後々は勿論の事、『字統』をひいている最中にも実際に一篆一行本にあたってみたくなる場面は多々あるわけですから、これも書いておくに越した事はありません。


この作業が一千字全てに於いて出来たところで、次にやったのがこれです。

千字文準備その2

先の比較検討の段階で、説文と小林千字文の字形の傾向については把握出来ていますから、それらを踏まえ、更に『清人篆隷字典(新装版)』(以下『清人字典』)で清人の具体例を見渡した上で、自分なりの字形を書いたものです。

つまり、これが今回の『小篆千字文』の草稿になったわけで、私はこれを見ながら筆であの『小篆千字文』を書いたのです。


『清人字典』については以前にも採り上げましたが、この本が無かったら、今回の試みを思い付く事は無かったかもしれません。

少なくとも、思い付きを実行に移そうとまでは考えなかったでしょう。

この本、この手の字書としてはとにかく小さいのが無条件で嬉しいです(笑)

しつこいようですが、机上でひたすら引き続けるには小さい方が良いのです。

バカでかい字書を何冊も同時に机上に広げながらドッタンバッタン、というのはそれだけでとてつもなく大変な事なのです。

例えば『金文編』『字統』『字通』『説文』『段注』の5冊を同時に使おうなどと思ったら、それらを広げるだけで机上が溢れてしまいますからね(苦笑)

これらの本の実物を知らない方でしたら、分厚い電話帳を何冊も同時に机上に広げながら、という様子を想像してもらえれば分かると思います。

大変そうでしょ?(笑)


この『清人字典』、とにかく気に入っているのですが、新装版になってまだ版が浅いせいか、索引のページの誤りが随分と残っています(苦笑)

私の持っているのは新装版の「再版」ですが、例えば音訓索引の「ゲイ」の部はほぼ壊滅状態でした(笑)

字書で索引が間違っていたのではホントに困るのですが、まぁ、仕方ありません。


さて、今回の話の中で、比較検討の為に私は

「改めて自分の手で書いてみる」

という方法を採りましたが、中には

「別に実際に書かなくても」

と思った人もいるでしょう。

私自身、日頃から説文をあれこれ扱っているのは勿論の事、小林千字文についても以前話したとおりこれまでに何度も書いています。

となれば、尚の事、今回わざわざ改めて自分の手で書いてみる必要など無かったのでは、と思うかもしれません。

しかし

比較検討を意識して書いた事はなかったのです。

勿論「見て比較するだけで十分」という人もいるのでしょうが、私にはそれでは不十分です。

比較検討を意識しながら「実際に書いてみる」という事によって初めて見えてくる事があるからです。

と言うよりも私の場合、見ただけでは気付く事が出来ない、と言う方が正直ですね(笑)

とにかく、私にとっては実際に書いてみる事が重要だったのです。


というわけで、今回の試みに先立って、私がやった準備についてお話しました。

こうやって言葉にすると何の事はないように思えてしまいますが(笑)、実際にやってみるとなると、なかなか手間がかかります。

扱う文字数が100や200ではありませんからね。

でも、その手間こそが、自分の中への新しい蓄積となっていくのだと思いますし、その手間をかける事こそが、実は一番の近道なのだとも思うのです。

如何でしょうか。

何かの参考にでもなれば幸いです。


さて、今年は今回が最後のアップになりそうです。

今年一年間、相変わらずのアップ率でした(汗)

にも関わらず、いつもの長話にお付き合い頂き有難う御座いました。

来年も何一つ変わる事も無く続けていく事になりそうですので、宜しくお願いします。

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

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定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道
posted by 華亭 at 02:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 小篆千字文について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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