2008年07月15日

書けない

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最近話が逸れ過ぎて、一体何のブログなのか分からなくなってますね(笑)


「覚悟」の回では、私が「書くのが辛くなって」書けなくなった話をしましたが、実はそれとは別に、「書きたくて仕方が無いのに」書けなくなったという事がありました。

これについてまで書き始めると何だか「苦労自慢」みたいになってしまってはなはだ見苦しいので(苦笑)、書こうかやめようか随分と悩んだのですが、当時の私を思い返すと、

「もっと早く誰かに似たような話を聞く事が出来ていれば、もう少し気分的に楽だったのに」

と思うので、何処かで似たような経験をされている方や、今後似たような経験をする事にならないとも限らない皆さんに、参考までにお話しておくのも無駄ではないと考えました。

その結果、「苦労自慢」みたいになってしまったとしたら、それはそれで仕方が無いと開き直る事にします(笑)

とは言うものの、また数回に亘ってしまっては、ホントに皆さんにそっぽ向かれそうなので(笑)、なるべく話を簡単にしましょうね。


何が起きたかと言うと、ある日突然、筆が持てなくなってしまったのです。

筆を持っているはずの手から、筆がポトリと落ちてしまうのです。

もう少し正確に言うと、力を入れて筆を持っているはずの右手の親指が、自分の意思とは全く関係無く、開いてしまうのです。

力が抜けてしまうというよりは、見えない手で無理矢理親指を開かされているような感覚でした。


最初は親指の関節に何となく違和感を感じていた程度でしたが、ほんの数日のうちにみるみる悪化し、とてもまともに書いていられるような状態ではなくなってしまいました。

不安になった私は近くの整形外科を受診しましたが、先生の診断ははっきりせず、

「なるべく使わないようにして少し様子を見ましょう」

という言葉と共に湿布が処方されただけで、殆んど意味がありません。


「なるべく使わないように、って言われてもなぁ・・・」

と困惑しながらも更に数日様子を見ましたが、症状はますます悪化するばかり。

結局その後、私はあちこちの病院に行き、診察を受け、色々な治療を試しましたがなかなか事態は好転しません。


因みにこの時もたまたま運悪く作品の締め切り間近。

書こうにも書いている途中で筆が落ちてしまうのですから、仕方無く、筆が落ちてしまわないように筆管を右手の親指に輪ゴムで無理矢理くくりつけて書いたという苦い思い出があります(苦笑)


こんな感じで突然

「書きたいのに書けない」

という状況になってしまった私でしたが、

「書きたいのに書けない」

これも辛いですよぉ(苦笑)


「覚悟」の回での話から少しずつ立ち直った私は、

「時間が無いんだ」

という強烈な強迫観念にも似た思いを抱きながら日々書き続けていましたから、

「書きたいんだっ!!書かせてくれっ!!!」

という気持ちだけがひたすらとてつもない勢いで空回りし続ける事になってしまい、そのうちに、自分でもどうして良いか分からなくなってしまったことを覚えています。


書こうにも筆が持てないのですから、どうしようもありません。

とは言うものの、仕事も休むわけにはいきません。

どうにか筆を持つ為に、親指に殆んど力を入れずに持ってみたり、更には親指を使わない筆の持ち方を考えて練習してみたり、あれこれしましたが、いくらそんな事をしてみても根本的な解決になるわけではありません。


「このままでは書が続けられないかもしれない」

本気でそう考え、これまた随分と凹みました。

何だか凹んでばかりですが(笑)


そうこうして心身ともに苦しんでいるうちに、たまたま鍼灸院に通院していた私の弟子に

「先生も一度行ってみたら如何ですか?」

と勧められたので、藁をもすがる思いで訪れる事にしました。


鍼灸院の先生、私の体を一目見て曰く、

「これは親指だけの問題じゃないよ。私も色々な人を診てきたけど、こんな背中見たこと無い。一体どうすればこんなになるんだい?」

との事。


人間の体というのはもともと

「これ以上やったら肉体が壊れてしまう」

という寸前で自然とリミッターがかかり、自分の肉体を自分自身で破壊してしまわないように自己防御するようになっているのだそうです。

スポーツ選手などはそのリミッターを意図的に外す術を覚えこむわけですが、当然、限界以上の負担は肉体に大きなダメージを与える事になります。

リミッターを外し続けた極度のダメージが重なり

「これ以上は肉体を維持出来ない。極めて危険。」

となった時、どうなるのか?

自分の意思とは全く関係無く、「肉体自身」が動く事を「ストライキ」してしまうのです。


私の親指が、力を入れているはずの向きとは反対の向きに、見えない手で無理矢理開かされているかのように開いてしまったのも、親指がそれ以上動く事を「ストライキ」していたのです。


先程「酷使」と言いましたが、当時の私がやっていた事を思い出してみると、

書き続けていると手が痛くなる。(無視する)

そのまま書き続けていると手がしびれてくる。(無視する)

そのまま書き続けていると手の感覚が無くなる。(無視する)

そのまま書き続ける。

と、こんな具合でした。


以前何処かで書いたかもしれませんが、手の感覚が無くなった状態で書き続けていると、不思議な感覚に包まれます。

何と言っても手の感覚が無いのですから、自分自身で書いているにも関わらず、自分自身で書いているという感覚がありません。

紙をじっと見ていると、自然と字が形となって次々に浮かび上がってくるかのような感覚です。


当時の私はそれを勝手な独りよがりで「擬似的無我状態」と呼んでいましたが(笑)、手の感覚が無くなって「擬似的無我状態」に入ってからこそが、本当の練習だと思っていました。

「擬似的無我状態」になってから書いた枚数の分こそが、本当の意味で自分の体に刻み込まれるものなんだと、本気でそんなふうに思っていたのです。


鍼灸院の先生に

「一体どうしたらこんなになるんだい?」

と訊かれた私は素直にこの話をしたのですが、まぁ、ひどく叱られましたよ(笑)

「痛みやしびれっていうのは体が発している警告なんだぞ!それをそこまで無視し続けていたら壊れて当然だろ!」


返す言葉がありません(苦笑)


手を酷使し過ぎているという事を十分認識しながらもそれを完全に無視したまま、更に酷使し続けるという日々を何年も繰り返し続けてきたという事実。

つまりはその結果の手の故障でした。


それでも幸いな事に、私の場合にはそこでの鍼灸による治療が少しずつ効果を顕し始め、数ヵ月後には筆が落ちるような事は無くなりました。

どうやら余りにもひどい私の体が先生の鍼灸師としてのプライドに火を付けたらしく(笑)、

「絶対に良くしてみせる!」

と、診療費度外視でありとあらゆる治療を施してくれました(感謝)


が、実のところ今でも完治はしていません。

これまた先生曰く

「必ずもう一度筆を持てるようにはしてあげるけど、今の仕事を続けているうちは本当の意味での完治は無理だと思うよ」

との事(苦笑)


今でも少し無理をし過ぎると、親指がきしむような感覚が走り、

「これ以上無理すると知らないぞ!またストライキするからなっ!」

と、警告が発せられます(苦笑)


この経験は結果として、私に「無駄な力」を入れずに書くという事を体で覚え込ませる事になりました。

その意味では、この時の手の故障はとても意味のある

「あの時の故障があったればこそ、今の自分があるんだ」

と思えるものとなったのですが、それでも、こんな故障などしないで済むのなら、その方が良いに決まっています。


ですから皆さん。

決して無理し過ぎてはいけません。

真面目で熱心な人ほど危険です。


手は、肘は、肩は、背中は、大丈夫ですか?

体からの警告に耳を傾けましょうね。


というわけで、何とか今回限りで終わりました(汗)

次回は少し軌道修正しましょうね(笑)

それではまた。

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初めてこのブログを読まれた方へ。

いらっしゃいませ。

あれこれ思いつくままに書いているので、書道独特の専門用語や人名などの固有名詞に関しては、その都度解説を付ける事はしていません。

初心者の方や学び始める以前の方には難解な部分も多かったかもしれませんが、お許し下さい。


「一言書いてみたいんだけど、みんなに読まれてしまうコメントに書くのは何だか気が引ける・・・」

という方や、

「何だか下手な事を書いたら説教されそう・・・」

という方、また、通信添削について御質問のある方は、下記のアドレスまで御意見御質問をお送り下さい。

誹謗中傷を目的としたような常識に反するもの以外、お返事させていただきます。

nonbirishodo@mail.goo.ne.jp


定期的にアップ出来ているわけではありませんが(正直言ってサボりがちです)、よろしかったらまた覗きにいらして下さい。

ラベル:書道
posted by 華亭 at 03:12| Comment(5) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
敢えていじわるな質問をします。
親指が開いてしまうのは筆の持ち方が悪いからじゃ
ないでしょうか?
幼少の頃から筆をもって高齢になるまで、
書いて書いて書きまくる先生は大勢いると思うのですが、
みなさん親指が開いてしまうんでしょうか?
Posted by いつも読んでます at 2009年01月04日 12:37
「いつも読んでます」さん。

コメント有難う御座います。
返事が遅くなり申し訳ありません。

返事についてですが、このコメント欄でお答えするには余りに長くなってしまいそうですので、大変申し訳ありませんが、記事として書かせていただきます。

なるべく早くアップしますので、それまでもう暫くお待ち下さい。
Posted by 華亭 at 2009年01月05日 02:08
つい一週間ほど前、課題にいそしんでおりましたらギックリ腰になってしまいました。二日後、様子をみて大丈夫かな、と思い、練習を再開するとまたピキリと。昨年末にも、ちょっと根を詰めて書いていると、指のしびれがとまらなくなり、しばらく通院したのですが、なんとも40の手習いもらくではないようでございます。まことにお恥づかしい次第。先生におかれましても、くれぐれもご自愛のほどお願い申し上げます。
Posted by holy at 2012年10月03日 10:18
holy様
何より先ず無理をせず御自愛ください。
一般の方々の身体は「書く」用には出来上がってはおりませんので、手・首・腰など、痛みやしびれが出た場合には決して無理をなさいませんよう。
私の近況としましては、身体的よりも精神的に少々参っておりまして、ブログのアップにまで意識が回りません(苦笑)
それでも漸く涼しくなってきましたし、何とかぼちぼちやっていきたいと思っています。
Posted by 華亭 at 2012年10月03日 18:38
すいません。懇篤の御言葉どうも有り難うございます。忝い次第です。昨日もまたピキリときてしまいまして、養生に専念することといたします。先生におかれましても、諸状況がよくなられますよう切に念じております。取り急ぎ御礼まで。
Posted by holy at 2012年10月04日 10:06
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